マネービジネスの詐欺を生む「不正直な」業界文化、スイス研究

金融不祥事は過大な表現にも原因がある〔AFPBB News

 「人望を得るにはどうすればいいですか」。これまでコンサルティングや講演・研修の際に、何度かこういった質問を受けたことがある。

 一筋縄には答えられない質問であり、私に答える資格があるのかと自問する質問であるが、人望を得るうえで欠かせない要素の1つとして答えさせていただいたことがある。

 それは「言葉に誠実である」ということである。

 短期的に一部の人間から人望を集めるためには、華美で大胆な言葉を頻繁に発する方法もあるかもしれない。しかし、長期的に多くの人間から人望を集めるための方法は、コツコツと誠実に生き方で語っていくしかない。

武士に二言はない

 誠実の「誠」という字は「言」が「成」ると書く。言った通りにことを成すことが誠であり、誠実であり続けていくうちに少しずつ人望は集まってくる。

 武士に二言はない。武士の言葉には一言一言に命が宿っていた。命をかけて言った通りにことを成す、誠の生き方を貫いていた。そのため、発した言葉に責任をとり、死をもって償った武士の壮絶な物語は数多く存在する。

 私の周りにも、武士に二言はないという生き方が感じられる人がいる。一度口に出した以上は何が何でもやり通す。派手な言葉は使わず、基本的に寡黙ではあるが、気遣いとユーモアのセンスは一流。

 自らの言葉に誠実に、淡々と夢に向かって歩みを進めるその姿には、地に足が着いた確固たる自信と強さを感じる。こういった生き方は人の心を打つ。実際、この人の周りには人が絶えず、そしてファンが多い。

 言葉に誠実かどうかは、会話の中の些細な表現にも表れる。

 「いくらでも」「誰でも」「どこにでも」。こういった表現を用いた発言はよく聞く。

「これだったらいくらでも作れます」
「そんなことは誰でもやってますよ」
「そんな会社はどこにでもあります」