日本全国各地で梅雨明けし、暑い日が続く中、みなさんいかがお過ごしでしょうか。そろそろ、夏季休暇に入られる方も多いかと思います。来週のお盆の入りを前に、ぜひとも読んでいただきたい宗教に関する本を3冊ご紹介します。

深刻化する「空き寺」問題

 1冊目は『寺院消滅』(鵜飼秀徳著、日経BP)。

 地方自治体の存続の危機を提示した「地方消滅」という書籍が、ベストセラーになり、様々な論争を巻き起こしたことは、記憶に新しいところです。ちなみに、地方に住む私としては、データ至上主義の点が気になりました。あまりにも現在と未来を点と点で捉えすぎ、線で考えていないのでは・・・。

 とはいえ、このまま日本の人口が減少していくことは明白です。と同時に、人口が減っていくと、逆に増えていくものもあります。

『寺院消滅』(鵜飼秀徳著、日経BP、1728円、税込)

 その1つが、「空き寺」。私たちにとって身近な存在のお寺は、現在、全国に約7万7000寺あります。そのうち、住職がいない、いわゆる「空き寺」は2万カ所にも上ると推定され、今後、ますます増えて行くことが予想されます。そうした現状を踏まえ、宗教を巡る様々な問題点を問い直したのが本書です。

 世界遺産の賑わいの陰で、空き寺が目立つ島根県石見や、東日本大震災からの復興を目指す岩手県陸前高田市、仏像の盗難に悩まされる福島県会津坂下・・・。

 地方の寺院の置かれた状況を伝えながら、葬儀でのお布施に代表される寺院の経済活動や、国家に翻弄されてきた日本仏教の歴史を分かりやすく織り交ぜることで、より深みを持たせています。僧侶の資格を持つ著者ならではの視点でしょう。

 檀家の高齢化や地域の過疎化による減少、仏教の都市化など地方の寺院の抱える問題は、一朝一夕で解決できるものではありません。ただ一方で、リタイアした企業人が僧侶を目指すケースが増えてきていることや、縁も所縁もない離島に住職として赴任する若者の姿を通して、後継者不足問題に一筋の光が見えるのが救いです。

 読み終えると、「空き寺」問題は、単なる宗教上の問題だけでないことが分かります。建物の崩壊の危険性という物理的な面はもちろん、檀家制度の崩壊を通して地域のつながりが失われてしまうのです。

 夏季休暇には、帰省してお墓参りをされる方も多いかと思います。その際には、他人事とは思わず、あなたの菩提寺についても考えてみませんか。1人でも多くの方が、「空き寺」問題に関心を抱くことが、解決への第一歩なはずですから。

 神社がもっと身近になる本

 ところで、この『寺院消滅』では、日本仏教の歴史を振り返る際に、「神道」にも触れています。