もはや“やって当然”となった宅配ビジネス

「お店に来て」から「お家に届けます」の時代へ

2015.08.07(Fri) 白田 茜
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 また、有機野菜だけでなく「プレミアム商品」も取り揃えている。オイシックスの「Oiチカグルメ」コーナーでは、“70店舗の1000品以上が揃う総合オンラインデパ地下”を標榜している。

 また、高級食材を従来より扱ってきた百貨店も、宅配事業に乗り出している。2011年に開始した阪急・阪神百貨店グループの食品宅配サービス「阪急キッチンエール」では、毎日の食料品からデパ地下の惣菜、スイーツ、そして日用雑貨まで約3000点を取り扱う。注文は24時間受付で、深夜12時30分までに注文すれば商品は翌日の夕方5時頃までに届けるという。

 三越伊勢丹ホールディングスは2011年に「三越伊勢丹エムアイデリ」を開始。青果、生鮮、惣菜、弁当、スイーツに至るまで、デパ地下グルメを約2500点を取り扱う。配送エリアは、関東の1都2府23県。ウェブサイトまたは電話で注文し、最短で3日から4日で宅配する。ヤマト運輸を利用し、注文した翌週の木曜日から翌々週水曜の間で、希望の曜日と6つの時間帯を自由に選べるという。

コンビニ参入で新たなサービス展開

 コンビニも宅配サービスを開始している。1996年にエーエム・ピーエムが店頭商品の宅配事業を開始。その後、2012年にファミリーマートも宅配事業に参入した。ファミリーマートの子会社で宅配弁当事業を行う「シニアライフクリエイト」の配送ルートを活用し、店頭で販売する日用品や介護用品などを宅配弁当と一緒に運ぶ。

 2000年にはセブン-イレブンがセブン・ミールサービス「お食事配達サービス」を開始した。500円以上で店舗の従業員が無料で宅配し、セブンミールのお弁当などに加え、店舗内の商品も併せて届けることができるという。2013年度の売上は250億円で、会員数は46万人以上に達している。

 2013年1月にはローソンとヤフーの合弁会社「スマートキッチン」も食材や日用品の定期宅配サービスを開始した。パソコン、スマートフォン、タブレット端末から注文した商品を毎週、指定した時間帯に届ける。2014年7月には「ローソンフレッシュ」としてリニューアルした。健康にこだわった商品1万6000点に絞り、ナチュラルローソンの関連商品や「らでぃっしゅぼーや」「大地を守る会」の有機野菜なども取り扱う。

 さらに、ローソンは佐川急便の持株会社SGホールディングスと業務提携し、コンビニ商品を宅配便と一緒に届けるサービスを開始する。6月に東京都世田谷区でサービスを開始し、2015年度中に東京都内100店に広げ、全国に拡大して行く予定だという。

 コンビニエンスストアが惣菜などを家まで届けるとなれば、弁当チェーンも当然ながらサービスで対抗する。弁当販売店チェーン「オリジン弁当」を展開するオリジン東秀は「彩食健味」を2013年から開始。持ち帰り弁当「ほっともっと」のプレナスはウェブを通じた宅配サービス「Netto Motto(ネットモット)」を、「ほっかほっか亭」のハークスレイも弁当宅配サービス「ほっか食楽」を開始。宅配寿司「銀のさら」を展開するライドオン・エクスプレスも宅配サービス「銀のお弁当」を始めた。

 その他、1時間刻みで時間帯指定ができる酒の宅配サービス「カクヤス」や、インターネット上で有名店のお弁当を注文できるサイト「ごちクル」など、宅配ビジネスに様々な事業者が参入し、いまや過当競争の様相を呈している。コンビニが配食サービスを行う、牛乳宅配が米や健康食品を扱うなど業種のクロスオーバー化も顕著だ。

現代版「御用聞きビジネス」

 小売業界では、消費者がいつでもどこでも商品を購入することできるようにする「オムニチャネル化」も進展しつつある。「どこに場所を構えて、何をどれだけ売るか」から「その顧客のニーズにいかに応えるか」という考えにシフトせざるを得なくなってきているのだ。

 日本には、もともと「酒屋」などによる御用聞き文化があった。近年では、配送網やコールドチェーンが発展し、生鮮品の当日配送も可能になってきた。一人ひとりの消費者のニーズにあった商品をなるべく早く手元に届ける現代版“御用聞き”の時代がやってきているのだ。

 セブン-イレブンは2006年から「御用聞き」を販売戦略に取り入れている。お弁当の配達の際に「お弁当の他に何かご入り用のものはないですか」と注文を受け付けるという。

 店を構えて客を待つ営業から、顧客の元へ訪れ「必要なものはないか」と尋ねる。「このお客様にはあの商品がおすすめ」と過去の好みからリコメンドしたり、「そろそろ○○が切れる頃だ」と見計らって注文を促す買い物シーンも想定できる。

 共働き家庭の増加や、高齢化に伴う買い物困難者の増加などで宅配のニーズは今後も高まりそうだ。過当競争の様相を呈している今、環境の変化に対応するスピード感と多様な消費者のニーズをいかに応えるかが鍵を握るだろう。

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1978年佐賀県生まれ。佐賀県庁で食品のブランド化に関わる。その後、大学院で農業政策や食品安全に関するリスクコミュニケーションを学ぶ。食品コンサルタント会社を経て、現在は社会的関心が高い科学ニュースについて専門家のコメントを収集しジャーナリストに提供する活動をしている。関心のあるテーマは、農業、食品流通、食品安全、リスクコミュニケーション。


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