もはや“やって当然”となった宅配ビジネス

「お店に来て」から「お家に届けます」の時代へ

2015.08.07(Fri) 白田 茜
筆者プロフィール&コラム概要

いかにコストを削減するか

 ネットスーパーの多くは近隣にある店舗からユーザーの自宅まで商品を出荷する「店舗型」だった。しかし、店舗の在庫から出荷するため、欠品のリスクが高く、ピッキングや梱包に伴い従業員の現場の作業が煩雑になる、といったデメリットがあった。

 これに対して、専用の物流センターから出荷する「センター型」もある。欠品リスクは低いが、設備投資や人員確保など先行投資が大きな負担になるというデメリットがある。

サミットは、センター型を導入していたが、2014年にネットスーパー事業から撤退。「黒字の見通しが立たない」と、その理由を明かした。受注数が想定を下回り続けており、採算が合わないという。

 首都圏では大手総合スーパーの他、生協やコンビニエンスストアの宅配、さらには百貨店が参入するなど競争が激化している。複数のネットスーパーを利用している登録者が多く、固定客づくりが難しい状況にある。また、消費者の「無料が当然」という意識から、配送料が無料になっているのもネックだ。収益の改善のために一部の事業者では配送を有料化する動きもみられる。

 競争が激化する中、ネットスーパーに本腰を入れるスーパーもある。イトーヨーカドーは、2015年3月にネットスーパー専用店舗「ネットスーパー西日暮里店」の運用を開始した。受注から製造調理、ピッキング、配送管理に至るまですべてシステムにより制御する。

 業界初の取り組みとして、全長約600メートルのコンベアや、専用ハンディターミナルも導入するという。業界初の専用の設備やしくみを導入し、既存のネットスーパーの約5倍となる最大2000件の注文を1日に受けるという。都心部であれば、周辺に店舗のなかったエリアにも配送が可能になるという。店舗は、対面販売とネットスーパーの複合型で、ネットとリアル(店舗)を融合させた「オムニチャネル」の事業拠点になるという。

“宅配の老舗”生協は時間帯指定で対抗

 ネットスーパーの競争相手はスーパーマーケットだけではない。

 “宅配の老舗”といえる存在が生協だ。日本生活協同組合連合会によると、地域生協の宅配事業供給高は2014年度推計で1兆6956億2300万円。1兆円を突破する規模で、数ある宅配サービスの中でも最も規模が大きい。近年は共同購入に代わり個別購入が急増している。2007年度には個別配送が共同購入を初めて上回った。

 これまでは、同じ地域の居住者が班単位で共同購入するのが主流だったが、近年は個人宅配が宅配事業の売上の7割近くを占めるまでになった。背景には、共働き世帯が増加し、留守が多くなったこと、ライフスタイルの多様性によって組合員のニーズが一様ではなくなったこと、高齢者の家庭も増えたことなどがあると思われる。自宅まで直接配達してくれる宅配サービスは消費者のニーズを捉えた買い物の手段になってきたのだ。

 生協宅配は配送日から注文から1週間後で、生協側の指定した日時に配送されるため、ネットスーパーと比較して利便性には欠ける。そんな中、ついに時間帯指定のサービスを開始する生協も出てきた。パルシステム東京はいつでも注文できて受取日も選べる「指定便」を新たに開始。顧客の利便性重視へと大きく舵を切った。17時から20時の夜間配送サービスも拡大している。現在は都内の一部地域にとどまる対象エリアを広げるほか、他の生協にも導入する予定だという。

宅配食材も高級志向「オンラインデパ地下」が好調

 比較的高級な食材を届ける宅配サービスも近年成長している。「オイシックス(Oisix)」「らでぃっしゅぼーや」「大地を守る会」などの野菜宅配サービス業だ。

 中でも「オイシックス(Oisix)」は好調で、14期連続で過去最高売上を達成し、2015年3月末時点で売上高は180億6000万円。定期購入会員数は約9万6700人になるという。

 同社は2000年にインターネット上で商品の選択と注文を完結させる仕組みを導入。他の食材宅配サービスがセットのみの取り扱いなのに対し、オイシックスでは、好きなものを1品から注文できる。また、年会費や入会料が無料なので、気軽に始めることができる。注文してから届くまでに4~5日程度かかるが、収穫してから届けるまでの時間を最短にすることに比重を置いているという。

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1978年佐賀県生まれ。佐賀県庁で食品のブランド化に関わる。その後、大学院で農業政策や食品安全に関するリスクコミュニケーションを学ぶ。食品コンサルタント会社を経て、現在は社会的関心が高い科学ニュースについて専門家のコメントを収集しジャーナリストに提供する活動をしている。関心のあるテーマは、農業、食品流通、食品安全、リスクコミュニケーション。


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