もはや“やって当然”となった宅配ビジネス

「お店に来て」から「お家に届けます」の時代へ

2015.08.07(Fri) 白田 茜
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 配送時間が短いことや、時間指定できることなど利便性が高いのがネットスーパーの特徴だ。イトーヨーカドーは、注文当日または、翌日の昼から21時までの間で時間帯指定できるサービスを展開。イオンも、ヤマト運輸と連携して16時までに注文すれば当日に宅配するサービスを展開している。消費者の“なるべく早く欲しい”というニーズを満たすべく、注文から自宅に届けるまでのスピードは加速している。

 近年では、スーパーマーケットだけでなく、IT大手もネットスーパーに参入している。Yahoo!は「Yahoo!ショッピング」を展開し、食品では水、ビール、ジュースなどの飲料、洋菓子や和菓子、魚貝類、肉、加工品、野菜、フルーツ、米、パン類、麺類、惣菜などと多岐にわたり取り扱っている。

 2012年7月には、楽天のグループ会社「楽天マート」がネットスーパーのサービス提供を開始した。楽天はすでに、紀ノ国屋や関西スーパーのネットスーパーが楽天のモールに出店する「楽天ネットスーパー」を立ち上げているが、今回は楽天自ら商品を仕入れ、販売する直営スタイルだ。

ネットスーパーに儲けはあるのか?

 「実はそんなに儲からない」といわれているネットスーパー。スーパーマーケット各社は、なぜネットスーパー事業に乗り出しているのか。

 実際、ネットスーパーは宅配や収集・仕分けや車両、システムなどのコストがかかる。たとえ利益が薄くても「うちだけやめるわけにはいかない」というのが本音かもしれない。競合店が次々とネットスーパーに参入する中、普段は自店で買い物をする顧客が、商圏外のネットスーパーに流れてしまう可能性がある。

 スーパーは売上の減少に頭を悩ませている。日本チェーンストア協会の発表によると、2014年のスーパー売上高は13兆207億円。既存店ベースで前年比0.6%減だった。消費税率が5%に引き上げられた1997年から、18年連続のマイナスだという。消費税増税の影響や、景気回復の実感が乏しく消費マインドが回復していないことが背景にあると考えられる。売上高を増加させるためにも顧客のニーズに合わせた取り組みが欠かせないのだ。

 薄利であっても、配送先のエリアを増やし、店舗の商圏外の消費者を取り込むことを他企業がしていれば、ネットスーパーに参入しないわけにはいかない。つまり、ネットスーパーは顧客の囲い込みにもはや必要不可欠な事業なのだ。店舗売上高に占める割合はまだ少ないが、今後、小売の売上に占める割合が上昇することが考えられる。

 現に、2015年にはイトーヨーカドーのネットスーパーが2月期で売上高11.1%増の500億円となり大きく売上を伸ばした。対応店舗数は145店舗、顧客数では200万人にもなるという。イオンネットスーパーも100億円規模の売上高で成長を続けている。

 富士経済によると、インターネットスーパーの市場規模は2015年には1000億円にまで拡大すると推計されている。

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1978年佐賀県生まれ。佐賀県庁で食品のブランド化に関わる。その後、大学院で農業政策や食品安全に関するリスクコミュニケーションを学ぶ。食品コンサルタント会社を経て、現在は社会的関心が高い科学ニュースについて専門家のコメントを収集しジャーナリストに提供する活動をしている。関心のあるテーマは、農業、食品流通、食品安全、リスクコミュニケーション。


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