(2015年7月24日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

ピアソンによるFT売却を報じる英FTの7月24日付紙面

 英フィナンシャル・タイムズ(FT)は1888年の創刊以来、無数の買収案件を取り上げ、自身の業界の再編の波や資産交換、貪欲な大物について詳しく報道してきた。

 だが、頻繁に飛び交う憶測にもかかわらず、FTは1957年以来、所有者が変わらなかった。

 さまざまな地方紙やマーチャントバンクのラザードから利息を得てきた英国の建設会社S・ピアソン・インダストリーズが「健全で保守的な投資」としてFTの経営権を取得した年のことだ。

 当時、「産業、商業、公共問題」という旗印を掲げたサーモン色のロンドンの新聞だったFTは、このニュースにわずか2パラグラフしか割かず、FTの「経営と方針は現在と全く同じように続く」と断じた。

 23日にピアソンが日本経済新聞社に8億4400万ポンドでFTを売却すると発表する頃までには、初期に確立された編集の独立性の方針の厳密な順守を除くと、ピアソンもFTも58年前とはほとんど判別がつかないほど姿を変えていた。

58年で大きく変貌

 FTがラザードの思惑に影響されていると見られた場合、ラザードへの投資が批判を招くことを理解していた新オーナーのピアソンは1957年、FTの編集長を任命することを除き、編集部門の決定に関与しないことを誓った。FTの社説は今でも、「Without fear and without favour(恐れず、おもねず)」という1888年当時の題字の宣言の下に掲載されている。

 ピアソンはかなり前に、ラザードの持ち株のほか、ろう細工からぶどう園、テレビ制作会社まで多種多様な資産を売却し、グローバルな教育市場に経営を集中させてきた。同社は今、この分野で「世界の有力学習企業」を称している。

 ピアソンは、FTはこの「学習」の範疇に入ると述べ、傘下の事業ポートフォリオにおけるFTの地位を正当化してきた。ピアソンは専門教育コースでFTのコンテンツを利用し、有力者との面会を可能にするFTの力を謳歌してきた。

 だが、近年はFTが投資の優先事項であることはめったになく、投資家はしばしば、ニュースアナリストのケン・ドクター氏が23日に「しっくり収まらない存在」と呼んだものに疑問を投げかけてきた。