シェール革命の風雲児が危ない

OPECの増産、中国経済の変調─なお続く原油の供給過剰状態

2015.07.27(月) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44381
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 2008年に百万BTU当たり13ドル超の高値を記録した米国のガス価格は、2009年には3ドル台に落ち込み、エクソンモービルなどガス生産会社は軒並み赤字に転落。チェサピークは経営危機に見舞われた。

 危機を乗り切るためにチェサピークは、他のガス生産会社と同様にシェールガスの生産から徐々に手を引き、価格が高い原油などの生産にシフトする。同時に、豊富に有するシェールガス関連権益を売却する動きに出た。2010年10月に中国海洋石油(CNOOC)が約11億ドル、2011年2月に世界最大の鉱山会社である英豪BHPビリトンが約48億ドルでチェサピークの権益を取得するなど資産売却は順調に進んだが、チェサピークの経営は想定通りには改善しなかった。2012年に入ると米国の天然ガス価格が100万BTU当たり2ドル前後まで下落し、業界全体で年間約100億ドルの赤字という事態になってしまったからである。

 マクレンドン氏は2013年1月にCEOを退任することとなったが、まさに「シェール革命の浮沈を体現する人物」だったと言えよう。

 体制を一新したチェサピークは経営立て直しのために、さらなる資産売却とシェールオイル・ガスの増産に努めてきた。しかし2014年後半以降の原油価格急落で2015年第1四半期は大幅な赤字に転落した。2014年9月時点で25ドル台だった株価は、2015年7月には9ドル台と低迷(前述の「配当停止」報道後、株価は8ドル台に下落した)、さらなる資産売却も困難になりつつある。

資金難に陥るシェール企業が続出

 7月に入り、海外勢で最もシェール事業への投資額が多い多国籍企業、BHPビリトンがシェール事業で多額の損失(28億ドル)を計上し、米シェール事業への設備投資額を2016年6月期は前年度より55%減らすことを明らかにした。大手石油・ガス企業では、英BPが21億ドルの評価損を計上。英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルも多額を投じた開発が失敗に終わるなどシェールブームはすっかり冷え込んでいる。

 2013年1月31日付フィナンシャル・タイムズは、「チェサピークは前払いで現金を受け取る見返りに将来生産する石油やガスを現物で支払う『ボリュームメトリック・プロダクション・ペイメント(VPP)』などの不透明な金融契約を駆使して債務を積み上げている」と報じている。原油価格の下落で、チェサピークの生産物の価値はますます下がり、借金の返済のために赤字覚悟の生産の増加に迫られることになる。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

エネルギー戦略

20世紀の社会を築き、支えてきた石油。しかし世界的な環境意識の高まりの中で、石油依存社会の限界が明らかになりつつある。石油はいまどうなっているのか。石油社会の次を築き、新世紀を切り開くイノベーションは何か。その最先端の姿をリポートする。

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