日米同盟強化には国防予算削減に苦しむ米軍も期待している(海自と米海軍のP3哨戒機、写真:米海軍)

 新国立競技場の建設をめぐってコストの問題が顕在化し、結局は安倍首相の“英断”により新国立競技場デザインの白紙撤回という事態に立ち至ってしまった。この問題と安保法案(平和安全法制整備関連法案・国際平和支援法案)に関する議論とは、構造的な類似性がある。

 東京オリンピック開催決定後の2013年10月には、新国立競技場の建設費が3000億円に上ると報道された。しかし、12月4日には、自民・民主・維新・公明・みんな・生活・社民の超党派共同提案の「2020年東京五輪決議」内で「国立競技場の改築をはじめとする競技場など関連諸施設について、環境の保全に留意しつつ、着実に整備する」ことが衆議院文部科学委員会で採択された。しかしながら、国会での審議過程では、新国立競技場建設に関するコスト計算が議論された形跡がない。実際に国会での決議文にもコストが明示されていなかった。

 五輪決議と違って、安保法案に関する国会での審議は与党と野党の間で決定的な対立が生じているが、安保法案実施のためのコスト計算、すなわち国防費の裏付けに関する議論は、新国立競技場と同じく等閑視されている。

予算が捻出できなければ「絵に描いた餅」

 先日、衆議院を通過して参議院に送られた安保法案は、日本防衛にとって必要な安全保障システム、とりわけ日米同盟に関連する諸施策を整備し強化するために必要な法的環境を打ち出している。