このところ大手企業の業績が好調である。東証一部上場企業の2015年3月期における経常利益は、好調だった前期をさらに上回り過去最高を更新している。

 大手企業の業績が拡大しているのは、好調な米国経済を背景に北米向け販売が伸びていることに加え、円安で見かけ上の売上高や利益が増大しているからである。2兆円を超す純利益を叩き出したトヨタはその代表選手と言える。かつて円高とデフレに苦しみ、減収減益を繰り返していた姿からは大きく変貌したと言ってよい。

 だがニッポン株式会社は本当に稼ぐ力を取り戻したのだろうか。円安の進行で輸出額は増大しているが、輸出の数量はあまり伸びていない。グローバルな基準で見た場合、数量が伸びないことはシェアの減少につながり、国際的な競争力を低下させる可能性がある。円安の効果が出ている今こそ、本当の意味でのビジネスモデルの転換が求められている。

ニッポン株式会社は輸出で支えられてきた?

 政府が7月3日に公表した2015年版の通商白書がちょっとした話題になっている。円安で日本企業の業績は回復しているものの、市場の伸びが大きい分野でのシェアが低下し、諸外国に比べて収益力が低い水準という実態についてハッキリ指摘した内容だったからである。

 多くの人が認識しているように、日本は、戦後一貫して、工業製品の輸出で経済を支えてきた。GDP(国内総生産)に占める輸出の割合は1割から2割程度であり、実はそれほど大きな値ではない。だが、このことは日本経済において輸出の影響が小さいということを意味しているわけではない。