(英エコノミスト誌 2015年7月11号)

株価急落に対する中国政府のパニック的な対応は、経済改革のペースに疑問を投げかける。

中国株急落、1200以上の銘柄が売買停止

7月7日、中国・浙江省杭州で、株価の電光掲示板を見て頭に手をやる投資家〔AFPBB News

 ほぼ2年にわたり、中国における経済改革への期待は、ごくわずかな文言の変化を根拠としてきた。中国共産党は、2013年後半に開催した幹部会議で、資源配分における「決定的役割」を市場原理に担わせると宣言した。それまでは、市場原理の及ぼす影響力は「基礎的」なものとされてきた。はなはだ心もとない拠り所ではあるが、この表現の変化が、中国政府が企業や貿易、金融に対する支配を緩めるのではないかとの大きな期待を支えていた。

 このような期待は、7月第2週に入って起きた中国株式市場の暴落で打ち砕かれた。

 現地時間7月7日の取引終了時には、中国各地の証券取引所に上場している2774銘柄のうち実に90%以上の取引が売買停止あるいはストップ安に陥った。

 株価は1カ月足らずで3分の1下落し、3兆5000億ドルに相当する資産が吹き飛んだ。これはインドの株式市場の時価総額を上回る額だ。

 しかし、株価の急激な落ち込みやこれが中国経済に与える影響以上に憂慮すべきなのは、この暴落を食い止めようとして打たれた、中国政府のパニック的な対策の数々だ。

 今回の株式市場の混乱は、現在の中国を率いる習近平国家主席と李克強首相にとって、就任後初の深刻な経済的汚点だ。株式市場が受けた打撃を修復しようとする中国当局の試みは失敗に終わり、ただでさえ悪い状況をさらに悪化させただけだった。今や、中国共産党が誤った結論を引き出し、中国経済を不安定性に対してさらに脆弱にするという危険性が生じている。

危険信号となった赤旗

 第1の過ち――中国に対して悲観的な見方をする人たちがよく犯すもの――は、今回の株式市場の急落が経済崩壊の予兆だとする考え方だ。これはまずあり得ない。確かにわずか数週間で中国の株式市場は3分の1下落したが、それでも3月のレベルに戻ったにすぎない。1年前と比較すると、現状でも75%上昇しているのだ。

 劇的な暴落の中で見過ごされているのは、中国経済に株式市場が果たす役割はまだ小さいという事実だ。

 中国全土の株式市場における浮動株の時価総額(売買に供される株式の総額)は、国内総生産(GDP)の3分の1ほどで、100%を越える先進諸国と比べると低い。家計の金融資産のうち株式に投資されているのは15%以下で、そのため株価が急上昇した際にも消費が押し上げられることはほぼなかった。ゆえに今回の急落が消費に与えるダメージもほとんどないはずだ。