(2015年7月14日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

ある出席者の言葉を借りると、記録的なマラソン会議となったユーロ圏首脳会議では、ギリシャのチプラス首相は「磔(はりつけ)」のような責め苦に遭ったという(写真© European Union)

 ギリシャがユーロ圏離脱の瞬間に最も近づいたのは昨日(7月13日)の午前6時前後、ブリュッセルでちょうど夜が明けた頃のことだった。

 ギリシャのアレクシス・チプラス首相とドイツのアンゲラ・メルケル首相は過酷な話し合いを14時間続けた末に、行き詰まったと考えた。

 もう妥協の余地はなく、交渉を続ける理由も見当たらなかった。グレグジット(ギリシャのユーロ圏離脱)だけが唯一の現実的な選択肢だった。

 2人が部屋のドアに向かって歩き始めた時、動いたのはドナルド・トゥスク欧州理事会議長だった。ユーロ圏の歴史に残る分裂の引き金が、疲労と苛立ちによって引かれるのを阻止しようとしたのだ。

 「悪いが、この部屋から出すわけにはいかないんだ」。ポーランドの前首相はこう言った。

最後までもめたギリシャ民営化基金

 もめていたのは、差し押さえたギリシャの国有資産を裏付けに設立する民営化ファンドの規模と目的だった。

 メルケル氏は、500億ユーロの資産を売却して債務の返済原資にしたいと考えていた。一方のチプラス氏は、ギリシャの国民所得の3分の1近い価値のある資産の支配権を差し出せというのは国家に対する侮辱だと見なした。

ギリシャ問題の「最終期限」、12日にEU首脳会議

席を立とうとしたメルケル首相とチプラス首相を引き留めたドナルド・トゥスク欧州理事会議長〔AFPBB News

 そこで、同氏はファンドの規模をもっと小さくする、そして売却代金はギリシャに再投資されるようにするという代案を出した。

 いろいろな仕組みを1ダース近く、1時間以上かけて検討した結果、ようやく妥協点を見いだすことができた。

 そしてこれが、欧州連合(EU)に最大の試練をもたらしてきた出口のなかなか見えない危機において、最大級の疲労と不安を伴った週末の交渉を終結に導くこととなった。