(2015年7月2日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

ベルリン・フィルの次期首席指揮者決まらず、1年以内に再協議

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者サイモン・ラトル氏(右)〔AFPBB News

 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団がサイモン・ラトル氏の後を継ぐ次期首席指揮者にキリル・ペトレンコ氏を選んだことは、そもそも決断を下したという事実ほどは目を引かない。世界で最も民主的な音楽事業の1つである総勢124人のオーケストラは5月、11時間に及ぶ議論と数回の投票にもかかわらず、決断を下せなかった。

 今回は秩序が回復され、ペトレンコ氏が民意の選択として浮上した。同氏は、才能に富み、時として手に負えない音楽家の集団を率いる仕事の難しさを感じるだろう。

 ラトル氏はかつてこの仕事を「世界で最も恵まれたライオン調教師」になぞらえたことがある。音楽家は演奏している時はリーダーの指揮棒に従うが、舞台裏では誰もが自由に議論できると感じる。

 これは達成するのが難しいバランスだ。ベルリン・フィルは戦後、ヘルベルト・フォン・カラヤンの指揮下で世界的に有名になった。カラヤンは華がある支配的な演奏家で、マエストロという言葉は彼のために発明されたのかもしれないほどだ。

 指揮者は皆、オーケストラに権威を示さなければならない。さもなければ、すべてが醜い小競り合いに陥る恐れがあるからだ。

反乱から生まれた極限のパートナーシップ

 だが、経営の単純さや財務力、規模の経済性のために相互会社やパートナーシップが営利企業に姿を変えることが多いこの世界で、ベルリン・フィルは1つの指針だ。同楽団は人材のパートナーシップを管理するのがどれほど難しくても、時として並外れた結果を生み出すことを示している。

 ロンドン交響楽団を含む他のオーケストラと同様、ベルリン・フィルも反乱から生まれた。演奏家のグループが指揮者の意思に反抗し、協同組合を立ち上げたのだ。ベルリンでは1882年、ロンドンでは1904年にこれが起きており、オーケストラの世界では自己統治が一般的だ。ロンドンのオーケストラはすべて(BBC交響楽団は数えない)、パートナーシップだ。