フィリピン大統領「世界が中国に懸念」に中国反発

中国の船が浚渫(しゅんせつ)作業を進めるスプラトリー諸島のミスチーフ礁(2015年3月16日撮影)。(c)AFP/CSIS Asia Maritime Transparency Initiative/DigitalGlobe〔AFPBB News

 これまで、マニラの会議で行われたフィリピン最高裁のアントニオ・カルピオ判事による国際法の解釈について紹介してきました(「フィリピン最高裁判事が中国の主張を一刀両断に」「南シナ海の埋め立て、合法と非合法の分かれ目は?」)。

 今回と次回は、カルピオ判事が指摘した「南シナ海の歴史問題」と「南シナ海において中国の行動をいかにすれば止められるのか」という専門家の議論についてさらにご紹介したいと思います。

国連海洋法条約では「歴史的事実」は無意味

 中国はこれまで南シナ海について言及する際に、中国の過去の歴史を持ち出して、中国の領有権を主張してきました。例えば、2014年5月のシンガポールにおける「シャングリラ対話」(アジア安全保障会議)において、中国人民解放軍の王冠中・副総参謀長が「中国は漢の時代に早くも南シナ海、特に南沙諸島や関連海域の管理を始め、徐々に完備していった。漢の時代とは紀元前200年、今年は2014年。この方面の歴史的資料や文献は大量に残されている」と表明しています。

 しかし、国連海洋法条約の解釈においてこのような歴史的事実は何ら意味を有していないのです。カルピオ判事は、次のとおり指摘します。