「技術協力の真髄」

 この国の鉄道は、1877年に宗主国イギリスが最初の区間を整備して以来、主な幹線鉄道は植民地時代にほぼ完成した。

 その後、独立してからも、鉄道は国内統一や少数民族対策の一環と位置付けられ、特に1990年代以降、積極的に新線や複線の建設を進めてきた。現在の総延長距離は5876kmにおよぶ。

 他方、既存路線の改修や設備の更新はほとんど行われてこなかったため、線路や列車の老朽化は著しい。脱線・衝突事故は年間650件以上に上り、運行ダイヤの遅延も慢性化。その結果、経済的に余裕のある人々はどんどん鉄道を利用しなくなり、いまや冒頭のようなひどいイメージが定着している。

 しかし、近年、ミャンマー政府はネットワークの拡大に力を入れてきたこれまでの鉄道政策の変更を発表。

 今後の経済成長をにらみ、最大都市ヤンゴン、首都ネピドー、北部の商業都市マンダレーを結ぶ南北の幹線をはじめ既存路線の整備・近代化を進める意向を示している。これを受け、日本がその鉄道力を生かし、さまざまな形で協力を進めている。

 マンダレーからネピドーまで列車に乗った2日後、ヤンゴン中央駅から25km北東のレダンガンの踏切付近は、朝から活気に溢れていた。

 雨期明けらしく青々とした草地を突っ切って地平線までまっすぐ伸びる2本の線路の上を十数人がせわしげに歩き回り、土を掘る音や金属がぶつかる音、モーターを回す音がひびく。

 男たちは皆、作業着の上から蛍光色の安全ベストを羽織り、赤や白のヘルメットを被っている。「そ~れ、1、2、3!」という掛け声と共に古い枕木が線路の下から1本ずつ外され、新しい枕木が置かれていく。

2人1組で古い枕木を持ち上げ、線路の下から外す
ミャンマーの線路は生活道路でもある。作業の合間に親子連れが通り過ぎた