(2015年6月12日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 世界の債券市場における大きな転換は、投資家のポートフォリオを大混乱させる。だが、実体経済にとって、それは必ずしも悪い知らせではない。そのことは、ドイツの10年物国債の利回りが6月上旬に1%超まで跳ね上がった最近の混乱にも確実に当てはまる。価格と逆の動きをする利回りの上昇は、インフレ率上昇の見通しと一致する。

 このため、ドイツ国債の利回りを筆頭とした世界的な利回りの急上昇は、明るい物語を語っているのかもしれない。

 つまり、欧州が危険な日本式デフレ不況に陥りつつあるという不安が和らいでおり、市場が米連邦準備理事会(FRB)の利上げに備えて――ゆっくりと――準備しているということだ。

 債券市場が暗闇を見て取っている場所に、ほかの人たちは明るい光を見るかもしれないのだ。

 重要なことは、債券市場が物語を正しく理解しているかどうかだ。特にFRBが金融政策の引き締めに近づいているだけに、誤った判断は一段と破壊的なボラティリティー(変動)をもたらす可能性がある。

ECBの量的緩和の影響

 残念ながら、債券ストラテジストたちと話をすると、心配になるほど低い水準までインフレ率が低下する世界的なトレンドが決定的に反転したとの確信はほとんど感じられない。このことは、幅広い不確実性を物語っている。

EU首脳会議、ユーロ圏全銀行の一元監督で合意 13年から段階的

ユーロ圏の債券市場にはECBの量的緩和が大きく影響を及ぼした〔AFPBB News

 過去2カ月間に起きたことは、主に極端なポジションからの後退だったように見える。

 ユーロ圏の債券利回りは、3月初めに打ち出された欧州中央銀行(ECB)の量的緩和(QE)プログラムに基づく大量の債券購入の結果として急低下した。

 だが、4月中旬にマイナス領域に向かっているように見えたドイツの10年物国債利回りは、破局のシナリオと一致していた。期限の短いドイツ国債は前代未聞のマイナスの利回りで取引されていた。