(英エコノミスト誌 2015年6月6日号)

日本企業を目覚めさせる見込みがこれほど明るかった時はない。

日本企業が大きく変わろうとしている(写真は東京 (c) Can Stock Photo

 ダニエル・ローブ氏ほど好戦的な投資家はほとんどいないだろう。同氏は精彩を欠いた最高経営責任者(CEO)を最も個人的な面で攻撃することで知られる米国のアクティビスト(物言う株主)だ。ところが、そのローブ氏は最近、日本――意見を持つ株主がこれまでガーデンパーティーのスカンクほどしか歓迎されなかった国――に第2の故郷を見いだした。

 ローブ氏が率いるファンド、サードポイントは昨年末、ファナックの株式を取得した。

 ファナックは秘密主義で極めて収益性の高いロボットメーカーで、最近まで、投資家と直接的な接触をほとんど持たず、代わりに莫大、かつ膨れ上がる現金の山をため込むことを選んできた会社だ。

ファナックを動かしたアクティビスト

 ローブ氏の作戦が成功するとは誰も思わなかった。過去にも投資家が相次いで押し寄せ、ファナックにやり方を変えるよう促そうとしたが、大抵は損を出して、敗退する結果に終わった。そのため、ファナックが投資家との対話を始め、現金の一部を投資家に還元するという3月の同社の驚きのニュースは、至る所で反響を呼んだ。

 ローブ氏はその後、富士山麓にあるファナックの本社で稲葉善治社長とお茶を飲んだ。政府の最上層部からもさらなる激励を受けている。同氏は安倍晋三首相、麻生太郎財務相、黒田東彦日銀総裁と私的な会合を持った。

 「彼がデビッド・キャメロンやアンゲラ・メルケルと会うなんてことを想像できますか?」。東京のある友人はこう言う。「サードポイントはここがとても気に入っていますよ」

 規模が大きな民主主義国で恐らく最も企業が政府のことを気にかける場所で、権力層の最上部からこのようなシグナルが出されたことは、企業経営者の間で見過ごされることはなかった。

 そして、政府は単なるジェスチャー以上のものを提供している。6月1日には、政府の新たな「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)」の適用が始まった。その目的は、例えば、企業に社外取締役を選任するよう求めることによって(今は多くの企業が社外取締役を置いていない)、企業のものぐさな取締役会を目覚めさせることだ。

 日本政府が、企業の仕事のやり方について詳細なルールを制定したのはこれが初めてだ。

企業に変化を迫る政府

 企業にやり方を変えさせようとする安倍氏の試みは、日本経済に活力を取り戻すための壮大な計画「アベノミクス」を構成する1つの要素だ。企業改革は、日銀の金融緩和とともに、これまでのところアベノミクスの最も具体的な要素になっている。安倍政権は、コーポレートガバナンス・コードを骨抜きにしようと最善を尽くした日本最大の企業ロビー団体、経団連からの圧力に抵抗した。