(2015年6月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

海抜270メートルから見る初日の出、東京・六本木ヒルズ

日本経済に夜明けが訪れようとしているのか〔AFPBB News

 経済史の重要な分岐点は、ごくたまにしかやってこない。優れた政治家が意を決して取り組めば、一国の経済が進む航路を若干変えることはできるかもしれないが、大きく変えられることは非常に少ない。ましてや、全く新しい方向に進ませることなど、まず無理だ。

 新時代の到来を示唆する断絶の瞬間は、半世紀に1度ぐらいしか訪れない。

 思えば、フランクリン・D・ルーズベルト大統領が米国経済を不況から引っ張り上げたのは1930年代のことだ。

 英国のマーガレット・サッチャー首相と米国のロナルド・レーガン大統領の下でインフレスパイラルが制御されたのはその50年後のことだった。

安倍首相が手にした大きなチャンス

 日本の安倍晋三首相は、このえり抜きの政治家のリストに名を連ねるチャンスを手にしている。

 安倍氏が政権を握った時、市場は文字通り大喜びした。日本がデフレによる停滞から脱出するまで、制限を設けずに金融を緩和すると約束した「アベノミクス」への期待だけで株価は急騰した。2012年以降、日経225種平均株価は2倍以上に上昇しており、為替市場では米ドルが対円で50%も上昇している。

 市場のこうした動きは、アベノミクスが到来を告げるはずの「またとない」レジームチェンジ(体制転換)の顕著な特徴だ。これに対し、実体経済の判断はまだそこまで明確ではない。

 安倍政権の1年目には、物価上昇を伴う経済成長が少し回復したものの、2014年4月に消費税率が引き上げられた後は先細りになっていった。パチパチと音をたて始めていた物価回復の炎は、昨年秋の世界的に消されてしまった。