(英エコノミスト誌 2015年6月6日号)

円安が日本以外の場所で問題を引き起こしている。

円安のインパクトが諸外国に波及している (c) Can Stock Photo

 日本の安倍晋三首相が進める経済改革、アベノミクスの効果は、活発な議論の的になっている。2012年の安倍首相就任以来、まずまずの経済成長とインフレ率の上昇が見られた時期も何度かあったが、いずれも長続きしていない。

 2015年の日本の国内総生産(GDP)の伸び率はわずか0.8%で、消費者物価指数は0.6%の上昇(コア指数はさらに低い0.3%)にとどまると予想されている。

 アベノミクスの影響で明らかに変化しているのが、円の価値だ。2012年末時点では、円は1ドル=87円で取引されていた。それが6月第1週に、1ドル=125円台まで値下がりした。30カ月で30%以上下落したことになる(次ページの図1参照)。

 この円安の原因となっているのが、新たに円を生み出して資産を買い入れる日銀の大規模な量的緩和(QE)プログラムだ。日銀は年間80兆円(6440億ドル)の紙幣を印刷している。

円安に泣く他の輸出国

 この円安は、諸外国に2つの難問をもたらしている。第1に、日本の輸出業者の競争力が高まる結果、ライバルの輸出国が不利になるという点がある。

 特に今はタイミングが悪い。スイスの大手銀行、UBSによれば、中国と香港を除く主要新興国市場では、ここ3カ月の輸出が、2014年の同じ時期と比べて軒並み減少しているという。世界全体の輸出は5月にやや減少し、過去2年近くで初めての減少となった。

 最近の世界貿易の停滞については、中国経済の変化も一因となっている可能性がある。中国のメーカーはこれまで、他のアジア諸国から部品を輸入し、完成品を世界に輸出してきた。だが今では、自国で部品を製造するケースが多くなっている模様だ。その結果、アジア域内の輸出が減少している。