ソウル市長、MERSとの「戦争」宣言 情報共有めぐり政府を批判

韓国・ソウルの繁華街、明洞をマスクを着用して散策する観光客〔AFPBB News

 6月6日土曜日の12時頃、筆者の携帯に「国民安全処」から緊急災難メッセージが入ってきた。開けてみると、「MERS(マーズ=中東呼吸器症候群)の予防 1.よく手を洗うこと、2.せきやくしゃみの場合は口と鼻をかくす、3.発熱、呼吸器症状の人には接触しないなど」とあった。

 国民安全処と言うのは、セウォル号沈没事故の後、朴槿恵(パク・クネ)大統領の鶴の一声で作られた組織で、従来の安全行政府安全管理本部、消防防災庁、海洋警察庁を統合したもの。安全に関する国家の最高決定機関となっている。

 そんな組織から国民に向けて一斉に発せられたマーズへの対処法にしては、遅すぎるし、何とも基本的すぎて何の役にも立たない。

 韓国では5月の20日に最初のマーズ患者が確認されてから、6日現在で計50人の患者が発症し、このうち4人が死亡した。

 国民安全処よりずっと早い先月末の段階で、「カカオトーク」など、SNSではマーズに関する団体向けの警告メッセージが出回っていた。

明洞に閑古鳥鳴く

 その内容は、「地方でマーズウイルス感染者が出た。このウイルスは感染力が強く、致死率が40%、有効なワクチンも治療法もなく、接触するだけで感染するとのこと」だったり、某病院へは行かないようにとか、ある病院の患者数などが公開されたりといったものだった。

 正確かどうか分からない情報も紛れ込み、人々を怖がらせるのには十分だった。

 週明けには韓国がマーズ危険国に指定されたことで、韓国を訪れる観光客がめっきり減り、明洞(ミョンドン)では閑古鳥が鳴いているというニュースが流れた。

 マーズは、2012年に初めて確認されたウイルス性の感染症で、原因となるウイルスは、MERSコロナウイルスと呼ばれている。主に中東地域で患者が報告されている。