2015年4月にスタートした「機能性表示食品」制度。導入から2カ月が経ち、申請を試みる企業からは、早くも「不明な点を挙げたらきりがない」との声が漏れ聞こえる。この連載では、制度や表示に頼らない“本当に売れる”リアルなマーケティング手法について、ヘルスケア領域を中心に考えていく。

“国のお墨付き”がない機能性表示食品

 消費者の 「自主的かつ合理的な商品選択の機会の確保」 を促す制度として導入された「機能性表示食品」制度。トクホ(特定保健用食品)と比べ、事前審査は形式的で、早く、安く、商品開発が行えるようになるという期待が事業者側にはあった。しかし、ふたを開けてみれば、その実情は消費者にとっても、事業者にとっても難解なものとなっている。

 前回のコラム(「機能性表示」で売ろうとするのは間違いだ!)で述べたように、機能性表示食品は、トクホと異なり、国から個別の認可を受けるものではない。特定の食品の効果効能をうたうことが、国から認めているわけではないのだ。責任は事業者にあり、企業は製品発売後にエビデンスの不備を指摘されるといったリスクを避けることはできない。

 案の定、発売後どころか、届出を受理された直後から、製品の妥当性を疑問視されるケースがすでに出ている。消費者団体などから、製品のウェブサイト上で公開されているデータの不備や、過去のトクホ申請過程など、あらゆる観点から指摘を受けているのだ。

 安全性の疑いを指摘されたのは、リコム(東京・南池袋)からダイエット茶として発売されている「蹴脂(しゅうし)茶」。このお茶に含まれているエノキタケ抽出物が問題となっている。同社は2009年にトクホに申請していたが、食品安全委員会から「心血管系や呼吸器系など多岐にわたる臓器に影響を及ぼすことが否定できないため、安全性を評価することができない」と指摘されており、トクホ申請は認可されていない。

 一方、このお茶と同成分が含まれるサプリメント「蹴脂粒」は、機能性表示制度で届出が受理されており、この整合性を巡って議論が巻き起こっている。