(2015年6月2日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

5月20日、インド・チェンナイで「KWID」を披露するカルロス・ゴーンCEO。左端がジェラール・デトルベ氏(Photo:Renault Communication/All rights reserved)

 ルノー・日産自動車連合のカルロス・ゴーン最高経営責任者(CEO)はこの最新のクルマについて、まるで奇跡だと言わんばかりの調子で説明してくれる。

 「社内のプロダクトエンジニアにこれを開発するよう頼んだ。フランスと日本で頼んだ」

 世界の主要な新興国市場を席巻するのにふさわしい超低価格のハッチバック車を作る戦いに挑み始めたころを振り返り、ゴーン氏はこう語る。

 「そうしたら、全員に無理だと言われた」

 この初期の懐疑論にもめげず、61歳になるゴーン氏は先月、インドの自動車生産都市チェンナイでの発表会でステージに上がり、新型車「クウィッド(KWID)」を披露した。欧州の自動車製造グループがインドで組み立てた新型車を投入するのはこれが初めて。しかも同社は、このクルマの設計チームやエンジニアリングチームもインドに置いていた。

市場のリーダーと張り合える格安自動車

 クウィッドの外見はごく普通だ。いわゆるコンパクトカーで車輪が小さく、スタイリングは小型のSUV(スポーツ多目的車)に似ている。しかし、その値札には思わず見入ってしまう。そこに記された価格はわずか30万ルピー(4700ドル)。インドの格安小型車業界の有力企業各社、特に市場のリーダーであるマルチ・スズキと張り合える水準なのだ。

 ゴーン氏によれば、この低価格は「フルーガル(質素、倹約的)・エンジニアリング」に頼ることによって初めて可能になったという。