日本企業がROE(Return On Equity:自己資本利益率)経営に傾倒し始めている。多くの企業が経営目標にROEを掲げ、増配や自社株買いによってROEの向上を図っている(参考:ROE経営を提唱する「伊藤レポート」経済産業省、「経営目標にROE広がる 伊藤忠15%、三井化学8%」日経電子版)。

 ここにきて日本企業が急速にROEを重視し始めたのにはいくつかの背景があるが、中でも、安倍政権が成長戦略で打ち出したスチュワードコード・シップとコーポレートガバナンス・コードの導入を進めた影響が大きいだろう。

 スチュワードコード・シップは機関投資家の責任を強化するもので、コーポレートガバナンス・コードは中長期で企業の資本生産性を向上させ、グローバル競争に打ち勝つ強い企業経営力を取り戻し、景気の好循環を実現させることを狙いとしている。

 簡単に言えば、企業が手元資金を有効活用して「稼ぐ力」を高めることを促すことであり、ROEはその目安とされている。

ROEを向上させる特効薬とは

 ROEは企業の純利益を自己資本で割って導き出される。つまり、ROEを向上させるためには、(1)分子(純利益)を増加させるか、(2)分母(自己資本)を減少させればよい。

 そこで、分母を減少させる“即効薬”である「配当の増額(増配)」と「自社株買い」が昨今の流行となっているわけだ。2014年度の上場企業の株主還元額は過去最高の13兆円(配当金9.5兆円、自社株買い3.3兆円)と純利益の4割相当にまで達している。2015年度は2014年度を上回る株主還元が行われると推測されている。