(英エコノミスト誌 2015年5月23日号)

東南アジアのボート難民は、地域全体の名誉を傷つけている。

東南アジアで横行するロヒンギャ人らの人身売買

船に乗ってタイのリペ島沖を漂流していたロヒンギャ人の難民(2015年5月14日撮影)〔AFPBB News

 緑色の小さな1艘の釣り船が、3カ月近く、東南アジアの広大な青い海を漂い続けていた。船に詰め込まれていたのは、どこの国も受け入れたがらない人たちだ。

 当初、船に乗った300人ほどの難民――その大半は、ミャンマーで迫害されているイスラム教徒の少数民族、ロヒンギャ族の人々だ――は、密航業者に案内されていた。

 だが、逮捕を恐れた密航業者が逃亡してからは、はっきりとした目的地もないまま難民たちだけで海を漂い、タイやマレーシアの岸に近づくたびに、海上警備隊に接岸を阻まれた。

 BBCとニューヨーク・タイムズ紙のジャーナリストを乗せた小型船が近づき、難民船の甲板に水の入ったペットボトルを投げると、難民の1人は、すでに10人が死んだと訴えた。彼らの航海は、インドネシアの漁師たちに救出された5月20日にようやく終わった。

漂流難民に対する場当たり的な対応

 この船だけではない。ここ数週間、マラッカ海峡やアンダマン海を多くの船が漂っている。漂流者の数は、合わせて数千人に達する。一部は、母国――主にミャンマーとバングラデシュ――での貧困や抑圧から逃れてきた人たちだ。中には、身代金目的でさらわれた誘拐の被害者もいる。

 タイ警察は5月の初めに、以前から違法な業者の手引きによりロヒンギャ族やそのほかの人々が密入国に利用していた陸上ルートを遮断し始めた。それ以降、3000人を超える人々が、マレーシアやインドネシアの海岸からの上陸を試みるようになった。