ロシアへの経済制裁がもたらすEUのエネルギー危機

米国がロシアに譲歩、EUは梯子を外される形に

2015.05.22(金) 藤 和彦
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 ロシア産ガスへの依存度低下を図るため、欧州でもシェールガスの開発が進められているが、不発に終わっている。ポーランドは欧州で最も水圧破砕法の採用に積極的だが、掘削コストが高い等の理由から、米エクソンモービルやシェブロン、英蘭シェルなどスーパーメジャーは計画を断念している。また、欧州は日本と同様に米国のシェールガスをLNG化して輸入する計画を有しているが、米国のシェールガスは天然ガス価格の低迷により今後生産が鈍化する可能性が高いため、当てにできないのが現状である。

ロシアへのエネルギー依存を脱却するのは正しい選択なのか

 政治的な理由から頑なにロシアへのエネルギー依存の低下を進める動きに対して、産業界からは「欧州のエネルギー安全保障を劣化させる恐れがある」との懸念の声が高まっている。

 2014年7月、フランスの総合エネルギー企業トタールのCEOは、「欧州のロシアガスへの依存度を下げるといった考えは捨てて、これらの輸送の安全をより確実にすることに注力すべきである」との意見を表明している。

 2013年のEUの天然ガス輸入量に占めるロシアからのシェアは36%に達した(供給量は前年比25%増)。EUへの大手輸出国であるアルジェリア、ノルウエーがアジア向けを増産し、EU向けを減産したからである。その中にあってロシアの供給安定性は群を抜いていた。その後、ウクライナ危機が発生したが、その6割がウクライナを通過するパイプラインにより輸送されている。現在に至るまで、ロシアからの欧州への天然ガス供給はなんら支障が生じていない(ウクライナへはガス料金未払いのため供給を停止した)。

 政治主導の「エネルギー同盟」は、1973年から40年におよぶソ連・ロシア産ガス輸入の実績を無に帰そうとしているとしか筆者には思えない。

 ソ連から欧州へのパイプラインに政治的な要素がなかったことは、ソ連が崩壊した際にもガス輸出が通常通り行われたという事実が何よりも雄弁に物語っている。ガスプロムにとっては、共産党政権の帰趨よりも、自らの利益を守るために消費地に対する供給責任をまっとうすることの方がはるかに重要だったからだ。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

エネルギー戦略

20世紀の社会を築き、支えてきた石油。しかし世界的な環境意識の高まりの中で、石油依存社会の限界が明らかになりつつある。石油はいまどうなっているのか。石油社会の次を築き、新世紀を切り開くイノベーションは何か。その最先端の姿をリポートする。

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