サウジアラビアはなぜ原油の増産を続けるのか

原油価格下落を穴埋め、過去最大水準に達する可能性も

2015.04.24(金) 藤 和彦
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 安全保障を重視するサルマン国王の下でその重責を担うのは、国王の息子であるムハンマド国防相である。ムハンマド氏の年齢は30歳前後と若いが、国防相は国王になるための登竜門の1つであり、王位継承権の上位に一気に躍り出た感がある。新国防相は「国王のえこひいき」との批判を払拭する意味でも、イエメンでの軍事作戦をなんとしても成功させなければならない。今後、イエメン情勢によっては軍事費がさらに拡大する可能性がある(イエメン南部タイズの政府側の旅団司令部を「フーシ派」が制圧したため、4月22日、サウジアラビアは空爆を再開した)。

 一方、中枢から外されているとの見方も出ており影が薄いのがムクリン皇太子(69歳)である。初代国王(イブン・サウード氏)の息子の中で最も若いムクリン氏は、母親がイエメン出身のため傍流とされてきたが、同じく「ズデイリ・セブン」(ズデイリ妃が生んだ7人の王子)の一員でないアブドラ前国王が自身の死後、一族の後見を託す狙いで抜擢したとされている。今後、新旧国王の取り巻きの間で抗争が起きるかもしれない。

 また、サウジアラビア内務省が4月20日に、「国有石油会社アラムコの石油施設等に対する外国からの攻撃の可能性に関する情報を得ており、治安部隊に出動態勢を整えるよう指示した」と発表したように、サウジアラビア政府はISIL(いわゆるイスラム国)に加わる若者やイエメンのフーシ派がが国内でテロを引き起こすことにも警戒しなければならない。

 このように内憂外患を抱えるサウジアラビア政府にとって、原油価格下落のデメリットを増産で補いたいという誘惑にかられていてもおかしくはない。予算穴埋めのため、今後原油生産量を前例のない水準まで引き上げる可能性があるのではないだろうか(サウジアラビアの原油生産能力は日量1250万バレル)。

 OPECは2カ月後の6月に再び総会を迎えるが、サウジアラビアの姿勢に対して不安を覚えるOPEC加盟国から、「2008年以降設定されていない“加盟各国に対する生産割り当て”の復活を検討すべきだ」との意見が出てきている。イランへの石油に関する制裁解除によりイランの原油輸出が増加する可能性があり、OPEC全体で対処する必要があるという理由である。米エネルギー省は「イランへの制裁解除により、2016年の1バレル当たりの原油価格は5~15ドル下回る可能性がある」と指摘している。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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