(英エコノミスト誌 2015年3月28日号)

独裁主義者たちは、シンガポールでのリー・クアンユーの成功から間違った教訓を引き出している。

リー・クアンユー氏が死去、シンガポール初代首相

シンガポールのリー・クアンユー元首相〔AFPBB News

 彼の不朽の業績を探しているのなら、シンガポールを見て回るといい。豊かで、整然とし、効率的で、誠実に統治されているこの国のあり方は、リー・クアンユー氏だけの功績ではない。だが、最も厳しい批評家でさえ、先日91歳で亡くなったリー氏が途方もなく大きな役割を果たしたことには同意するだろう。

 1959年に英国から「自治」を獲得する前からシンガポールの指導者だったリー氏は、1990年まで首相を務め、2011年になって初めて内閣を去った。

 リー氏の下で、天然資源を持たないシンガポールは苦境に喘ぐ小さな島から世界有数の豊かな国に姿を変えた。

 崇拝者たちはシンガポールを手本として、そしてリー氏を賢人として見る。同氏の影響力の一部は、物事を的確に見る目を持ち、率直な物言いをする戦略地政学者としての役割から来ていた。彼は時代を決定付ける戦い――中国の登場とそれに対する米国の対応――の鋭い観察者だった。

崇拝者を魅了する繁栄と一党支配の組み合わせ

 だが、それ以上に崇拝者たちは、シンガポールの繁栄と一党支配の組み合わせに目を向けている。彼らは「欧米流の民主主義」に欠陥を見て取る。短期主義、子供や外国人など非有権者に対する無関心、不適格な指導者を輩出する傾向といった欠陥だ。リー氏の「能力主義」は、1つの解決策を約束している。

 特に中国の指導者たちは、リー氏の権力掌握に魅了されている。中国の序列で2番目に大きな力を持つ人物が経済や内務省を動かしているのではなく、習近平氏の執務者たる王岐山氏であることは決して偶然ではない。

 中国の指導者のほかにも、自らが3期目を務められるように憲法改正を模索しているルワンダの独裁的なポール・カガメ大統領など、熱心に自分自身をシンガポールの建国の父になぞらえる人たちがいる。

 確かに、リー氏は世界に教えるべきものをたくさん持っている。だが、その崇拝者たちが、シンガポールは独裁主義が機能することを証明していると結論付けるとしたら、彼らは間違った教訓を引き出している。