(2015年3月19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 50通りもの微妙な違いがある外交上の言葉遣いでは、「accommodation(配慮、取り計らい)」という言葉はAで始まるもう1つの言葉「appeasement(宥和)」より痛烈さが若干弱いだけだ。先週、米国のある政府高官は、中国に対する「絶え間ない配慮」について英国を批判した。

 英国政府は、一部の人がいずれ米国主導の世界銀行に挑むのではないかと懸念する中国主導のインフラ銀行のメンバーになることに同意した。米政府高官の発言は、ほかにも譲歩があったことを言外に意味していた。ある時はダライ・ラマと会わないという取引があった。またある時は香港の民主主義について控えめな表現にとどめた、ということだ。

 「我々は中国への絶え間ない配慮へ向かうトレンドを警戒している。これは台頭する大国と関与する最善の方法ではない」と同高官は述べた。

台頭する大国と関与する最善の方法は?

 ここで疑問が浮上する。台頭する大国と関与する最善の方法は何か、という問題だ。もし「配慮」が答えではないとしたら、何が答えなのか? 米国は間違いなく、配慮に代わるものが「絶え間ない封じ込め」であることは否定するだろう。むしろ、中国をおだてて、その規則と規範が70年間にわたって地域の役に立ってきた既存の国際秩序に入らせなければならないと言うだろう。

 問題は、中国の観点からすると、そうした規則と規範は米国のイメージに沿って作られたということだ。

 このことは世界銀行のような多国間機関に当てはまる。中国は世界の経済生産の16%を持つにもかかわらず、世界銀行における投票権のシェアは3.8%しかない。海洋問題をカバーする規範にも当てはまる。ここでも中国の観点からすると、既存の規範は、米国が中国の利益にとって極めて重要なアジアの海を取り締まったり、中国の歴史的な主張に違反する戦後の領有権の線引きを守ったりすることを許すものだ。

 もし中国政府が、中国が疲弊している時代に西側が作った国際規範に従わなければならないのだとしたら、そもそも封じ込めなど必要か? 中国は妥当にそう問うかもしれない。

 インフラ銀行に関して言えば、英国が結束を乱した今、他国が追随する可能性が高い。実際、この銀行に参加する確かな根拠がある。もし米国政府の懸念が本当に、新銀行が環境や社会に関する規範を無視するということなのだとすれば、傍観しているより内部から影響を及ぼそうとする方がいい。