(2015年3月16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

オバマ米大統領、おちゃめな動画をネットで公開

バラク・オバマ大統領の賭けは吉と出るか?〔AFPBB News

 バラク・オバマ米大統領は、就任以来最大の外交上の賭けに出ようとしている。国内の反対論と全会一致に近い中東の異議を無視し、今後数日間でイランとの核合意を推し進めそうに見える。

 世界で一番強硬な神権国家を説得し、良い方向への転換を促せるというのが、オバマ氏の見方だ。時間とともに、イランのサイレントマジョリティーがアヤトラに対する影響力を強めていくというわけだ。

最大の敵と対話することの是非

 ここで試されるのが、最大の敵と対話することは道理にかなうという考え方だ。外交に対するオバマ氏の賭けは、これ以上ないほどジョージ・W・ブッシュ氏の世界観とかけ離れている。だが、彼らは1つの弱点を共有している。見事な一手がゲームを一変させられるという考えだ。

 ブッシュ氏は、中東で最も残虐な独裁政権を倒すことで中東に民主主義を植え付けられると考えた。オバマ氏は、中東で最も危険な政権と関与することで、安定をもたらすことを期待している。アメリカンフットボールでは、これを「ヘイルメアリーパス*1」と呼ぶ。オバマ氏の賭けは、それよりうまくいくだろうか?

 オバマ氏に対する批判を聞けば聞くほど、同氏のアプローチに対する共感が深まる。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相からサウジアラビアの支配者、米議会上院のほぼすべての共和党議員に至るまで、オバマ氏を中傷する人たちは、イランの言葉はそれが書かれた紙ほどの価値もないと考えている。

 よくてもオバマ氏はナイーブだ。最悪の場合は米国的でない。悪徳政権と取引することは、米国の価値観に背くというのだ。

 実際には、このようなトレードオフは非常に米国的だ。フランクリン・ルーズベルトは、より大きな大義のために、史上最悪の大量殺人者の1人であるヨシフ・スターリンと同盟を結んだ。リチャード・ニクソンは、スターリン以上に多くの人を殺した毛沢東と和平を結んだ。ロナルド・レーガンはアフガニスタンのムジャヒディンを支援した。これらの基準に照らせば、イランの罪は取るに足りないものだ。

 さらに言えば、イランは米国の普遍的価値観に対して何ら脅威を及ぼしていない。共産主義者は自分たちは全人類を代弁していると主張した。イランがその心に訴えかけるのは人類のたった約2%、世界のシーア派イスラム教徒だけだ。オバマ氏が好んで引用したジョン・F・ケネディの言葉の通り、「平和を実現したいのであれば、友人と話すのではなく、敵と話すものだ」。

*1=文字通り、神頼みのような一か八かのロングパスのこと