先月末にある日中関係に関するシンポジウムに出席した際、数人の中国問題の専門家の発言の底流に、パックスアメリカーナの終焉とそれに代わる中国の時代の始まりという時代認識のイメージが共有されているように感じられた。

 私自身はそれとはやや違う見方をしている。世界はグローバル化の中で多極化の時代に向かっており、中国が順調に発展を遂げていくとしても米国が20世紀に実現したような単独の覇権国家になる時代は来ないと考えている。

パックスアメリカーナの終焉

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多極化の進行で米国の相対的影響力は低下しつつある〔AFPBB News

 一方、私が心配になったのはパックスアメリカーナ終焉のインパクトである。これまで日本は米国との同盟関係によって様々な恩恵を受けてきた。パックスアメリカーナの終焉は米国のステータスの変化と共に日本が受ける恩恵も変質せざるを得ないことを意味している。

 ちょうどそのシンポジウムの直後に米国出張のチャンスがあったため、10人程度の米国の国際政治の専門家にパックスアメリカーナの終焉についてどう見ているかを聞いてみた。すると、ほとんどの専門家がパックスアメリカーナは終焉に向かいつつあるとの共通の認識を持っていると語った。

 この見方は最近になって出てきたものではなく、1970年代に広く認識され始めた。しかし、その後ソ連が崩壊し、経済面での脅威と見られていた日本も長期の経済停滞に陥ったため、1990年代には再びパックスアメリカーナが復活した。ITバブルの形成もその勢いを支えた。

 ところが、2001年9月11日、安全だと信じられていた米国本土がテロリストによって攻撃され、米国の安全神話が崩れて米国民の自信が傷ついた。同時期にITバブルが崩壊し、2008年にはリーマンショックが発生、経済面の自信も大きく動揺した。そこに中国が台頭し始めたため、再度パックスアメリカーナの終焉が強く意識されるようになった。

 それに加えて、最近のウクライナ問題と「イスラム国」問題への対応において米国の外交・安全保障政策の指導力低下が明らかとなり、その意識が一段と強まって現在に至っている。ウクライナ問題と「イスラム国」問題に関してはオバマ政権の判断の誤りとの指摘が多く、次の政権が誕生し、的確な施策を実施すれば、この2つの問題は改善するとの見方もある。