(英エコノミスト誌 2015年3月14日号)

米国にとって、ヒスパニック系住民の増加は大きなチャンスだ。無駄にしてはならない。

米国の赤ちゃん、史上初めて白人系が少数派に 米国勢調査

このまま行くと、2044年までに非ヒスパニック系の白人がマイノリティ(少数派)になると見られている〔AFPBB News

 2004年の風刺映画「A Day Without a Mexican(メキシコ人のいない日)」は、コックや子守や庭師が消え、慌てふためくカリフォルニアの人々を描いた作品だった。舞台を今日の米国に設定すれば、観る者をもっと考えさせる映画になるだろう。

 5700万人に上るヒスパニック系米国人が姿を消せば、公立学校の校庭で遊ぶ子供の4人に1人がいなくなり、アラスカからアラバマに至るまで全米の雇用主が事業を続けるのに苦労するはずだ。

 さらに、今世紀半ばまでには、ラテン系の人口がまた倍増する見込みだ。その時に彼らが姿を消したらどうなるのか、想像してみてほしい。

 なかには、国境を広く開放した情け深い米国を外国から来た居候が脅かしていると主張する人々もいる。建国からほぼ200年の間、米国民の80%以上はヨーロッパ人を先祖とする白人だった。現在では、ヒスパニック系ではない白人は、人口の3分の2を割り込むまでに減少しており、このままいけば2044年までにはマイノリティになると見られる。

 共和党の大統領候補が一堂に会した先頃の集会では、前アーカンソー州知事のマイク・ハッカビー氏が、「国境を越えたところにボウル1杯の食べものがあると耳にして」米国へ押し寄せてくる「不法移民」について不満を漏らした。

 人口動態の革命が起きているという点で、政治家たちは正しい。だが、本誌(英エコノミスト)の今週の特集でも触れているように、移民と国益を巡り政治家たちが恐慌をきたしているのは見当違いだ。米国はラテン系の人々を必要としている。米国が繁栄したいのなら、彼らを排除するのではなく、彼らが潜在能力を発揮できるように後押ししなければならない。

ヒスパニック発作

 国境を巡る興奮を煽る者たちは、いくつかの事実を見誤っている。米国南部の国境は、これまでになく越えるのが難しくなっている。最近のヒスパニック人口の増加は、新規の移民ではなく、主に米国内での出生によるものだ。

 何らかの方法で国境を完全封鎖し、不法移民をひとり残らず国外退去――無慈悲かつ不可能なことだが――させたとしても、4800万人に上る合法的なヒスパニック系住民は米国に残ることになる。ラテン系の人口の増加は止まらないだろう。