(2015年3月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 今年の初め、大手の石油トレーダーは超大型タンカーの手配に奔走した。原油を安値で買って船で保管し、先物市場でこれを売って利益を確定しようという目論見だった。

 しかし、船舶ブローカーやアナリストらの話によれば、原油を最長12カ月間沖合で保管するためにチャーターされたほぼ40隻のタンカーのうち、実際に原油を保管しているのはわずか2隻にとどまるという。

 石油商社のヴィトールは、タンカーに蓄えていた原油の一部を売却している。また、同業のグレンコアやトラフィギュラと同様に、そうしたタンカーをほかの業者に貸し出して通常の原油輸送に使えるようにしている。

 当初は、原油市場のコンタンゴ――商品先物取引の用語で、受け渡し時期が遠いものほど価格が高くなる「順ざや」状態のこと――は、1億バレルもの原油が洋上保管された2008~09年のそれに似たものになると期待されていた。しかし今のところ、この取引は以前ほど魅力的には見えない。

期近物と期先物の差が縮小

 北海ブレント原油が今年1月に1バレル約45ドルに急落した際、原油先物市場では期近の価格が12カ月先のそれを12ドル下回っていた。原油価格が1バレル60ドル前後に回復したため、この差は7ドル足らずに縮小している。

 原油の洋上保管は費用のかかる戦略だ。期近と期先の価格差が十分に大きく、船を借りたり保険をかけたりするコストをカバーできる時にしか利益を生まない。

 「原油相場のコンタンゴのカーブに着目して取引するなら、原油の保管料を払う必要があるし、原油を保管しておく取引の時間価値や資金もすべて勘定に入れなければならない」。グレンコアで石油トレーディング部門のトップを務めるアレックス・ビアード氏は先週、アナリストや投資家にこう語り、現在の状況は「大量の原油の洋上保管を推奨できるほど魅力的ではない」と付け加えた。

 期近と期先の価格差はすぐにまた拡大するだろうとトレーダーたちは期待を寄せているが、JBCエナジーのアレクサンダー・プーグル氏をはじめとするアナリストらは、そうなるまでタンカーをスポットの用船市場に出すのが利益を上げる賢いやり方だと指摘している。