(2015年2月27日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 サンフランシスコの非常に快適な一角で、証券取引所のナスダックが粛々と西海岸事業を拡大している。だが、ナスダックがこの街にいるのは、単にシリコンバレーで一番ホットなハイテク企業に新規株式公開(IPO)の準備をするよう説得するためではない。全く違う。

 昨年3月、ニューヨークに本拠を構えるナスダックは静かに、「IPO前」の企業が資本を調達し、既存株式を売買するための非公開プラットフォームを立ち上げた。現在、およそ60社が「ナスダック・プライベート・マーケット」に参加している。そしてナスダック関係者は、これらのハイテク企業の一部は、決して上場しない計画だと認める。

上場を目指さないハイテクベンチャー

 これは今日の米国「市場」の顕著な奇癖であり、投資会社や規制当局者はそれを見て、立ち止って考えるはずだ。

 20世紀終わりの前回のハイテクブームでは、ハイテク企業が急成長した時は大抵、速やかに証券取引所に上場しようとした。公開市場への登場は若い企業に信頼性を与えた。また、企業が投資のために多額の資本を必要としたり、創業初期の従業員がストックオプションを現金化できるようにする仕組みを必要としたりする場合、上場は不可欠だった。

 今回の好況期でも、主要市場へのハイテク企業上場は確かに起きている。最近の巨大IPOには、中国のインターネット大手アリババや、世界最大のピア・トゥ・ピアローン会社レンディング・クラブといった名前が含まれている。

 だが、その他の多くの急成長企業は上場しておらず、その代わりに、多くの場合会社の所有者(従業員や創業者、あるいは初期の投資家であってもいい)が持ち株を売ることを可能にする、いわゆる「レイトステージ」の資金調達ラウンドでプライベートマネーを調達している。

 一部の株式売却はナスダックのようなプラットフォーム経由で行われる。だが、多くはこれらの「プライベート」市場さえも避ける。

最初のドットコムバブルとの大きな違い

 シリコンバレーで数時間も過ごせば、この循環的なブームの規模が驚異的であることが分かる。最初のドットコムバブルを見た人にとっては、ホットマネー(短期資金)がホットなハイテクベンチャーに押し寄せる光景は既視感を生む。

 だが、現在のパターンを目を見張るものにしているのは、飛び交っているマネーの量だけでなく、マネーが移動している経路だ。