(2015年2月27日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

ウクライナはなぜ炎上しているのか?

2014年2月、ウクライナ首都キエフで、黒こげになった独立広場(通称マイダン)でにらみあう警官隊と反政権デモ隊〔AFPBB News

 19歳の学生のアルテムさんは1年前、ウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ大統領を倒した集団抗議行動に参加していた。

 アルテムさんはこの2月末に再び街頭に繰り出したが、今度はもっと平凡な不満が動機だった。暖房費の上昇、インフレの高進、通貨の急落だ。

 「私は1年前、ここマイダン(広場)にいて革命に参加しましたが、こんな深刻な経済的な痛みを感じるためじゃない。率直に言って、我々はとてもこんな痛みを受け入れられません」

 今では、ボクサーから抗議活動の指導者に転じたビタリ・クリチコ氏が主となっているキエフ市長の執務室の外に集まった1000人の抗議者に混ざって、アルテムさんはこう話した。

「暖房費がまた4割上がったら、何を食べればいいのか」

 58歳のボロディミルさんは、毎月受け取る2500フリブナ(90ドル)の年金のうち、7割が光熱費と基本的な費用に回り、1年前の3割から上昇していると言う。「政府が再び暖房費を引き上げ、計画されている40%の値上げに踏み切れば、私は何を食べればいいのか」とボロディミルさんは問う。

 抗議行動は、ウクライナの革命の高揚感が厳しい経済的現実に取って代わられたことを示している。中央銀行が為替取引の規制を強化する策をお粗末な形で発表すると、市場が動揺し、フリブナの対ドルレートは2月26日、史上最安値となる1ドル=33.78フリブナをつけた。中央銀行は規制措置を撤回した。

 断片的な報告によれば、一部のウクライナ人は、フリブナのさらなる下落を警戒して、生活必需品を買い占めているという。フリブナは、2013年暮れに始まった反ヤヌコビッチデモの前には1ドル=8フリブナで取引されていた。

 2月26日の抗議行動は、昨年大統領を失脚させたデモに比べると小規模で、親欧米派のキエフ新政府の反対勢力がカネを払っていた兆候が見られた。それでも、抗議者の感情の多くは本物のように見えた。経済危機が手に負えなくなったら、戦争で引き裂かれた国でより大きなデモが起き、不安定が増しかねないことを示す不吉な兆候だ。

 政府は、ロシアの支援を受けた分離主義者による反乱に直面している東部地域の掌握と経済破綻の阻止、包括的な改革の実行を同時に行おうと四苦八苦している。こうした改革は長期的にはウクライナに恩恵をもたらすが、短期的には多くの人に痛みも与える。