(英エコノミスト誌 2015年2月21日号)

低インフレやマイナス圏のインフレが世界中に広がっている。それは思っているよりも大きな心配の種だ。

 先進国の中央銀行にとって、「2」は特別な意味を持つ数字だ。物価が年2%上昇すれば、ほとんどの買い物客は、物価の緩やかな上昇を概ね無視できる。そして、ほんの少しのインフレは大きな助けになる。多少のインフレは企業経営者に、非生産的な労働者を突っつく手段――賃金凍結は実際には2%の賃金カットを意味する――と、会社の利益を投資に回すインセンティブを与えるからだ。

 最も重要なことは、それが経済をデフレと、物価下落がもたらしかねない気の滅入る選択――現金をため込んだり、購入を先延ばししたりすること――から遠ざけることだ。だが、この2%のマントラへの公然たる信奉にもかかわらず、一定期間の物価下落が到来しそうだ。

デフレの気配

 デフレの気配はいたるところにある(図1参照)。米国と英国、カナダ――すべて2%以上の成長を遂げている国――でさえ、インフレ率は目標を大きく下回っている。物価は東洋で冷え込んでおり、中国のインフレ率はわずか0.8%だ。日本の2.4%というインフレ率は消滅しそうだ。デフレに逆戻りしているからだ。タイはすでにデフレ状態にある。

 だが、最も目を引くのはユーロ圏だ。インフレの過去――1980年代にはインフレ率がイタリアで年平均11%、ギリシャで20%だった――は、遠い昔の記憶だ。今ではユーロ圏の19カ国中15カ国がデフレに陥っている。インフレ率が最も高いオーストリアでも、わずか1%だ。

 原油でかなり多くのことに説明がつく。ブレント原油は、1年前は1バレル110ドルだった。それが今は60ドルだ。この45%の値下がりは、各国経済にじわじわと伝わっている。英国では、2月17日に公表された統計が、エネルギー価格と輸送価格の下落が一因で、1月のインフレ率(消費者物価指数の上昇率)が前年比で0.3%だったことを示していた。これは過去最低の部類に入る数字だ。

 米国では、ガソリン価格が過去6カ月間で35%下落している。ディーゼルと灯油の価格も下落している。