(英エコノミスト誌 2015年2月14日号)

新しい硬貨の導入が、どの通貨を使うべきかという議論を呼んでいる。

超インフレのジンバブエ、公務員給与を「米ドル」で支給

2008年当時、猛烈なハイパーインフレが進み、パンを1つ買うために何十枚ものジンバブエドル札が必要だった〔AFPBB News

 2008~09年にインフレ率が800億%に向けて高進した時、ジンバブエはジンバブエドルを捨てて米ドルを使うようになった。

 以来、米国の硬貨を入手できない店主は、お釣りの代わりにペンや菓子、チューインガムを客に渡さなければならなかった。

 だが、1カ月余り前、中央銀行がジンバブエ国内だけで使われる米セント建ての「ボンドコイン*1」を発行し始めた。これが、ジンバブエには再び独自の通貨が必要なのかどうかという議論に火をつけた。

米ドルの採用で経済が落ち着いたが・・・

 米ドルに切り替える利点は多かった。一夜にして、気まぐれな政府関係者に金銭的な規律が課された。インフレはぴたりと止まり、成長を押し上げ、マクロ経済の安定に対する幅広い期待が生まれた。ひとたび正常な商取引が再開すると、輸入業者は取引コストの減少にあずかり、外国人投資家は為替レートのボラティリティーについて心配する必要がなくなった。

 ところが今、主に失政のせいで経済が再び悪化しており、今回は現地通貨が存在しないことが経済の病を悪化させている。

 信用できない統計のために、状況がどれほど悪いのか評価するのは難しい。政府関係者は今年の成長率が6%から下方修正されて、3%になると話している。野党議員のエディー・クロス氏は、昨年の国内総生産(GDP)が「少なくとも10%、もしかしたら14%減少し、2008年の崩壊時と同じ減少率になった」と主張している。

 断片的な情報は、暗い先行きを示している。ある投資家は、ビールの販売が急減していると言う。首都ハラレの繁華街の商店主らは、不満だらけだ。「腐敗した役人が、我々が税金として払うお金を奪っていく」と、ある携帯電話業者は語る。

 年間5億ドルに上る在外ジンバブエ人からの送金と、政府の赤字と外国からの援助の拡大によって、メルトダウンが阻止されている。米国政府はジンバブエの特定の政府関係者および企業との商取引を全面的に禁止しているが、この国の医療費の4分の1を支払っている。

*1=債券に裏付けられている硬貨。1セント、5セント、10セント、25セント硬貨があり、それぞれ米国通貨の価値と連動している