玉虫塗で仕上げたナッツボウル(写真:東北工芸製作所提供)

 キャロライン・ケネディ米駐日大使が2013年11月に宮城県内の被災地を視察した際に、宮城県庁に村井嘉浩知事を表敬訪問した。そのときのニュース映像を見ながら、知事は大使に何を贈ったのだろうかと気になっていた。県庁のホームページの写真を見ると、「記念品贈呈の様子」としか書かれていない。

 最近、震災後に着目されている宮城の伝統工芸品があると聞いて、仙台市青葉区上杉にある東北工芸製作所を訪ねた。そこで、あの贈りものがここで作られた「玉虫塗」のワイングラスだったことが分かり、疑問は氷解した。玉虫塗は、県が1985年に指定した伝統工芸品で、県庁御用達の贈呈品の1つとして使われているという。

 あでやかな色調の漆の工芸品である玉虫塗は、「工芸立国」「東北振興」の目的で1928(昭和3)年、仙台に設置された商工省工芸指導所が開発した技術を生かした製品群だ。塗りを重ねることによって、光の加減で色合いが微妙に変わり、タマムシの羽の輝きと似ていることから、玉虫塗と名づけられた。