(2015年1月27日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

前席を後ろに向けて走行中に談笑、独ダイムラーの自動運転車

2015年1月、米ラスベガスの「国際コンシューマー・エレクトロニクス・ショー」で公開されたメルセデス・ベンツの自動運転コンセプトカー「F 015」〔AFPBB News

 電子技術が自動車生産を支配し始めているにもかかわらず、自動車業界の日本人幹部は、自分たちの産業がパソコンやスマートフォンと同じ道をたどる可能性があるという見方を一蹴する。

 だが、自動運転を目指す競争は、自動車産業のコモディティー(汎用品)化の懸念を引き起こした。ソフトウエアの重要性が高まり、伝統的な製造方法を覆すようになるにつれ、米グーグルのような新規参入者が自動車の世界に進出してきているからだ。

 日本にしてみれば、これはお馴染の話だ。アップルやサムスンのような外国のライバル企業がソフトウエアを開発し、電子機器をより安価で操作性の高いものにすると、ソニーやシャープ、パナソニックなどの日本の電機大手は消費者向けの電子機器におけるリードを奪われた。

自動車がスマホになる日

 アナリストらは、トヨタ自動車をはじめとする多くの日本の自動車メーカーは、技術の進歩についていかなければ、同じ運命をたどる恐れがあると警告している。技術の進歩は最終的に自律走行車に至るかもしれないが、短期的には、運転中に特定の機能を遂行し、安全性を向上させる電子システムを伴うものだ。

 「独自の生産技術を誇りにしていた日本の電機業界は、結局、競争力を失ってしまった」。元メリルリンチのアナリストで、現在は自身の調査会社を経営する中西孝樹氏はこう話す。「今の状況が続けば、(自動車産業に)同じことが起きる可能性がある」

 クレディ・スイスのアナリスト、秋田昌洋氏は「自動車がスマホになる日が果たして来るのかどうかは分からない。しかし、もしその日が来たら、自動車は単なる輸送手段になる。そうなれば、ブランドが車の価値を決定づける唯一の要因になる」と述べている。

 結局ヒット商品にならなかったカメラ付き携帯電話や電子書籍リーダーの日本のイノベーションと同じように、日本の自動車メーカーとそのサプライヤー企業は自動車の安全技術を開拓しながら大きな成功は収めていない。

 こうした日本企業は、自動車事故の減少に役立つ先進運転支援システム(ADAS)の分野で欧州の競争企業に後れを取っている。中西氏は、日本は2020年以降まで欧州企業に追いつけそうにないと話している。

 2003年、トヨタは系列の自動車部品メーカー、デンソーが開発したミリ波レーダーを使った初の安全システムを導入した。このシステムは、衝突する前に警告を発し、ブレーキに圧力を加えたが、完全に車を止めるまでには至らなかった。当時は、自動停止機能は日本の規制で禁じられていた。