(英エコノミスト誌 2015年1月31日号)

為替市場が突如、大きく変動するようになった。

 今年に入ってからまだ数週間しか経っていないが、外国為替市場ではすでに混乱が生じている。

 1月28日にはシンガポールが金融政策を緩和し、同国通貨が対ドルで2010年以来の安値に落ち込むのを容認した。スイスはユーロに対してスイスフランの上限を定める政策を放棄。欧州中央銀行(ECB)は大規模な量的緩和(QE)プログラムを発表し、ユーロが対ドルで11年ぶりの安値をつけた。

 一方、カナダ銀行(中央銀行)の利下げは、カナダドルを1年前の1カナダドル=94米セントから80米セント前後まで押し下げた。

2つの作用の板挟み

 ボラティリティー(変動率)が突然跳ね上がった主な理由は、金融政策の乖離のようだ。各地の中央銀行はもう同じ方向に動いていないのだ。

 「2つの巨大な力が働いている」。HSBCの為替ストラテジスト、デビッド・ブルーム氏はこう言う。「ECBと日銀が紙幣を増刷して通貨を切り下げている一方で、米国経済が力強く成長している。両者の間に立っている人は皆、押しつぶされる恐れがある」

 スイスは板挟みになった。同国の上限設定措置は、スイスフランを創出し、それを使ってユーロ建て資産を買う仕組みだったが、スイスは明らかに、ユーロ圏でのQEを前にしてこの政策を維持することを嫌がった。だが、スイスフランの大幅な上昇は、国内経済のデフレ圧力を高めることになる。

 コモディティー(商品)価格の下落は、これが先進国世界の大部分にとって潜在的な問題であることを意味している。通貨高は、低インフレと完全なデフレの違いとなり得る。だが、通貨はゼロサムゲームだ。ユーロと円が下落するなら、何かが上昇しなければならないのだ。

 このため、為替市場は「パス・ザ・パーセル*1」に少し似たゲームになり、各国がデフレの脅威をよそへ押し付けようとする。

*1=子供のパーティーゲーム。子供たちが輪になって、プレゼントの入った包みを次々回していく