(2015年1月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

後藤さんの無事祈る、官邸前で集会

東京・永田町の首相官邸前で、イスラム過激派組織「イスラム国」に拘束されている後藤健二さんの解放を求め集まった人々〔AFPBB News

 日本では今、「I am Kenji(私はケンジ)」が「I am Charlie(私はシャルリ)」に取って代わって一番叫ばれるスローガンになっている。

 ここで言うケンジとは、後藤健二氏のこと。シリアで過激派武装組織「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」に拘束された、尊敬されているフリーランスジャーナリストだ。

 1月24日、今や嫌というほどお馴染みになったオレンジ色のジャンプスーツを着た後藤氏の動画が公開された。

 後藤氏は、人質になっていたもう1人の日本人、湯川遥菜氏の遺体を写したと見られる写真を手に持っていた。湯川氏はほぼ間違いなく、日本政府が2億ドルの身代金を払うことを拒んだ後に首をはねられたようだ。

 ISISはヨルダンに収監されているアルカイダの過激派の釈放を要求している。彼女が解放されなければ、次に死ぬのは後藤氏だ、とISISは警告している。

安倍首相の掲げた「積極的平和主義」

 後藤氏の運命よりはるかに大きなものが、今、分かれ目にある。平和主義憲法に根差す日本の外交政策が分水嶺に立っているのだ。後藤氏の運命に日本国民がどう反応するかが、日本が今後向かう方向性に大きな影響をもたらす可能性がある。

 互いに関連のある2つの変化が進行している。まず、保守派の安倍晋三首相は、より強固な防衛態勢を築こうとしている。これは首相が「積極的平和主義」と名付けたものだ。

 この積極的平和主義は、同盟国への武器の売却――最近まで厳密に禁止されてきたこと――から中国と争われている島嶼周辺での海上防衛の強化に至るまで、あらゆることを正当化するために利用されてきた。

 特に、安倍首相は同盟国が攻撃された場合に日本が支援することを禁じる憲法の解釈を変更したいと考えている。理想的には、日本が交戦権を永久に放棄することを定めた1947年憲法の第9条を廃止したいとも思っている。