(2015年1月27日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 中国有数の富豪が、インフラ工事契約に関する支払いが遅れているとの理由で6つの地方政府を訴えている。中国で政府が訴えられるのは稀なことで、経済全体に広がる未払いの債務のリスクが浮き彫りにされた格好だ。

 中国の地方政府による借り入れはここ数年急増しており、新規の借り入れの大半が既存の借り入れの元利返済に充てられている。そのため、地方政府のデフォルト(債務不履行)が本格的な金融危機を引き起こしかねないとの懸念も浮上している。

中国で異例の訴訟、「必要なら最高裁まで争う」

 中国太平洋建設集団(CPCG)の創業者、厳介和氏は26日、地方政府をこのように訴えたのは同社が初めてだと語った。「必要なら、最高裁まで争うつもりだ」とも述べ、「間違いなく我々が勝つ。記録も証拠も明白だ」と付け加えた。

 CPCGは、国有企業が伝統的に支配してきた中国インフラ整備業界で最大の民間企業。昨年は600億ドルの売上高を計上し、世界の企業番付「フォーブス500」で第166位となった。また厳介和氏は、中国の民間調査会社、胡潤研究院が昨年まとめた中国の長者番付で第7位にランクされており、その資産は142億ドルに上ると推計されている。

 訴えられたのは市および県の6政府。中国国家統計局の馬建堂局長は先週、地方政府の債務は中国経済にとって最大のリスクの1つになっていると強調した。先週発表された中国の昨年の経済成長率は、24年ぶりの低水準にとどまった。

 また中国の審計署(会計検査院に相当)によれば、2010年末に10兆7000億元だった地方政府の債務残高は、昨年6月までに18兆元に増えている。

 地方政府の昨年の債務残高のうち、CPCGが特化している「ビルド・アンド・トランスファー(BT)*1」方式でのインフラ整備プロジェクトによる債務は約8%、額にして1兆5000億元を占めていた。

 「民間企業が政府を訴えるのは極めて稀なことだ。同様な事例は記憶にない」。ドイツ銀行の中国担当チーフエコノミスト、張智威氏(香港在勤)はこう語る。「これは、CPCGのほかの取引先に対するシグナルでもある」

*1=民間企業が建設し、完成後に公共部門に譲渡する方式