(1)情勢分析の分岐点、空前の世界的金利低下をどう見るか

 今はまさしく天下分け目の関ヶ原である。一点をめぐって雌雄を決する局面に至っている。鍵は空前の金利低下をどう解釈するか。誰もが想像できなかったような著しい金利低下が各国で起こっている。日本の長期金利は、一時0.2%を下回って0.1%台となり、ほぼゼロ金利状態というところまで下がった。欧州ではドイツの長期金利が0.4%台となっている。この世界的な空前の金利低下をどのように解釈するかによって、戦略対応の違いが生まれる。投資家もアナリストも学者も、2つの相反する見解、のいずれかを選択しなければならない。傍観者、中立はあり得ない。

 1つは金利低下が悪いこととする見方である。金利低下は、(1)企業の資本収益力の著しい頽廃、(2)中銀の過剰な金融緩和、人為的債券バブル、というネガティブな要因によってもたらされたもの。これが多数派を占め、米国ではビル・グロス氏、日本では水野和夫氏が代表的論客であろう。多くの投資家やオピニオンリーダーも、この金利低下は悪いことで、暗い将来の予兆ではないかという漠然とした不安を表明している。

 彼らは金利の低下は成長機会が乏しく、投資が抑制されることによって起こっていると見る。また、主要国中央銀行の著しい量的金融緩和が、金利低下の原因であるという見方もある。成長できない経済において、量的金融緩和で無理に金利を下げたところで、それは時間稼ぎに過ぎない。今進行している世界的な量的金融緩和は失敗し、その先はグローバルな経済困難に陥っていくという悲観的展望が導かれ、今はリスク回避を徹底すべきだという結論になる。

 では金利低下は良いことだとすれば、どのような論理が対置されるのだろうか。今の金利低下がポジティブな要因、つまり(1)資本生産性の向上=資金余剰、(2)企業の収益力向上=超過利潤の存在、によってもたらされているとすればそれは明るい将来の前兆であり、積極的にリスクを取るべきだということになる。これは現状では少数派の見方であるが。

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コンセンサスの見方、金利低下は悪いこと

 今のところ、2つの仮説のどちらが正しいか、誰にもわからない。2015年以降の景気展開により、論争の決着はつくが、同時に投資パフォーマンスにも決定的な格差をもたらす。前者なら株売り、後者なら株買いである。