(2015年1月19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 量的緩和(QE)は「市場では織り込み済み」だと言われる。欧州中央銀行(ECB)は22日にほぼ間違いなく、国債の買い入れを決断したと発表するだろう。確かに織り込み済みかもしれないが、国債買い入れが実際に決断されたら、やはり欧州の金融・経済現代史における重要な出来事になる。

 起こってはいけなかったことが今起こっている。ECBを16年ほど前に生んだ思想に照らせば、これは大きな前進だ。だが、同時に、これは事態が非常に深刻になっているしるしでもある。

 今回のQEは予防的なものにはならず、傷を負った後に行われるものとなる。インフレ期待はずいぶん前に目標から外れてしまい、総合インフレ率はマイナスに落ち込んでいる。ユーロ圏の経済は病んでいるのだ。

欧州中銀、債務危機国の国債買い入れへ 1~3年債を無制限に

マリオ・ドラギECB総裁の発言に注目が集まる〔AFPBB News

 QEプログラムについては、さまざまな重要部分が先週末になっても議論されていたが、その一部については合意が形成されつつあるようだ――というのが筆者の理解だ。

 プログラムには具体的な数値が盛り込まれることになるだろう。5000億ユーロとの説があるが、もっと大きくなる公算もある。

 また、QEプログラムは限度のないものにはならないだろう。インフレ率を目標水準に戻すためには「何でもやる」とマリオ・ドラギ総裁が明言することは恐らくあるまい。

 つまり今回は、「ECBはこういう政策を取ることにした。金額はこうで、使い切ったらどうするかはその時点でまた決める」というような形になるだろう。

「水門理論」は間違い、最初から大規模なプログラムを

 数字は重要ではない、と楽観論者は言う。プログラムを始めれば水門が開き、インフレ目標を達成するまでこれを閉じることはできなくなるだろう、従って当初の規模は大した問題ではない、というわけだ。

 筆者は、この水門理論は間違っているのではないかと危惧している。政策の力学を読み誤っているからだ。