(2015年1月19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

世界都市の生活費ランキング、オーストラリアが急浮上

GDPを見ると、オーストラリアは先進国で唯一、過去20年以上も景気後退知らずの国(写真はシドニーの高層ビル街を背に進むヨット)〔AFPBB News

 フィル・ラモンディーノさんは30年近くオーストラリア各地の建設現場でダンプカーを運転しており、現場レベルから見た経済の状況を教えてくれる。 

 「私の業界はこれまで見てきた中で最悪の状態ですよ」。51歳の自営の運転手はこう語る。「競争がとても激しく、建設会社が倒産しており、私の報酬も未払いになっている。手取りの収入はこの2年で2割減りました」

 オーストラリア経済が2014年7~9月期に前年比で2.7%成長したにもかかわらず、中小企業の多くが経営不振に喘いでいる。2.7%という成長率は、まだオーストラリアのトレンドを下回っているものの、他の大半の先進国を上回っている。

 国内総生産(GDP)の拡大と多くの国内企業の業績不振との間の矛盾から、一部のエコノミストは、国全体の経済活動の主要指標としてGDPを使用することの妥当性に疑問を投げかけるようになった。

 「オーストラリアは主要なコモディティー(商品)輸出の価格が急落したため、2014年の第2四半期および第3四半期にインカム・リセッション(所得不況)を経験した」。バンクオブアメリカ・メリルリンチのエコノミスト、ソール・エスレイク氏はこう語る。「だが、これはGDP統計に表れなかった。GDPは『交易条件』の変動をとらえないからだ」

鉄鉱石や石炭の価格急落で交易条件が大幅に悪化

 オーストラリアの交易条件――輸入品と比較した輸出品の相対的な価値を示す指標――は、主要輸出品である鉄鉱石と石炭の価格急落を受け、2011年後半にピークをつけて以来約25%悪化している。

 エスレイク氏は、交易条件の変化を算入しており、国内生産によって生み出された総所得の購買力の尺度となる実質国内総所得(GDI)の方が、地元経済の足元の健全性を測るのに相応しい指標だと主張する。

 公式統計によると、GDIは2014年4~6月期に0.3%、7~9月期に0.4%減少しており、オーストラリアが現在、生活水準を直撃する「所得不況」に見舞われていることを示唆している。