本記事は2014年12月25日付フィスコ企業調査レポート(J-オイルミルズ)を転載したものです。
執筆 客員アナリスト 
角田 秀夫
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2015年3月期からの新中計をスタート、「質の向上を伴った構造変革」を断行

 J−オイルミルズ<2613>は、味の素製油とホーネンコーポレーション、吉原製油が2003年に統合して誕生した。国内食用油脂大手2強の一角である。製油事業がメイン(売上高の92%)であり、その他事業(売上高の8%)は、飼料・スターチ・健康食品・化成品で構成される。外部環境(大豆・菜種相場、為替など)の影響を受けやすい食用油脂業界ではあるが、業界再編による価格形成力を背景に、安定した業績を達成してきた。

 国内食用油脂業界2位(シェア29%)であり、トップの日清オイリオグループ<2602>(シェア30%)に肉薄している。特に業務用のシェアは高く、4割を超える。高付加価値製品で市場をけん引するポジションにあり、味の素<2802>ブランドを活用できる強みもある。

 2015年3月期の第2四半期(2014年4月-9月期)累計決算の売上高は96,680百万円(前年同期比5.1%減)、営業利益3,894百万円(前年同期比42.0%増)となった。原料価格(大豆、菜種)が低下し、ミール(油糧)価格も高値で推移したことが収益を押し上げ、油価の低下による売上減を補った形だ。

 2015年3月期通期計画は、期初の想定どおり売上高204,000百万円(前年同期比0.5%減)、営業利益6,500百万円(前年同期比3.9%増)を見込む。下期(2014年10月-2015年3月期)は、大幅な円安が進行し、国内ミール(油糧)価格も下落傾向であり、2015年1月からの油価値上げで収益確保を図る。

 2014年3月に発表された新たな中期計画(2014年4月-2021年3月)では、製油分野における効率化と高付加価値化、非製油分野の成長、海外展開の加速などを掲げ、「質の向上を伴った構造変革」を断行する計画が織り込まれた。製油分野の構造変革は、これまでのところ順調に推移しているようだ。2017年4月の倉敷工場の新設と神戸工場(住吉)の閉鎖により、搾油製造の再編が具体化されてきた。

 非製油・食品ファイン分野においては、2015年3月までに申請が完了する膵臓がん・肝臓がんの「がん診断薬」が注目される。海外展開においては、進出国(インド・タイ・中国・米国)における体制整備の段階から、具体的な結果が求められる段階に入る。

Check Point

●販売ベースでも推定シェアは29.4%でトップとは1.0%と勤差
●原料価格の低下とミールの高値推移が寄与、利益は大幅に上振れ
●売上高は年平均2.9%の成長、営業利益率は最大4.8%を目指す

会社概要

業界再編で誕生して10年経過、海外企業との連携を本格化

(1)沿革

 同社の前身は、味の素製油とホーネンコーポレーションが2002年に経営統合した豊年味の素製油。これに吉原製油が参画して2003年にJ-オイルミルズが誕生した。その後、3社のノンコア事業(非食用油脂事業)の再編や統合、製品ブランドの強化、原料調達や物流を含めたSCM(サプライチェーンマネジメント)の強化などにより、事業基盤の再構築に取り組んできた。