(英エコノミスト誌 2015年1月10日号)

警官らは市長に仕返しするために、一部の法律の執行をやめることにした。

米ニューヨークの警察官殺害で市警本部長が会見

現在再びニューヨーク市警本部長を務めているビル・ブラットン氏(中央)は「ゼロトレランス(不寛容)」政策でニューヨークおよびロサンゼルスの犯罪を減らしたことで知られる〔AFPBB News

 ニューヨークの犯罪率が目覚ましく低下した原因は絶えず繰り返される議論の対象だが、小さな犯罪を真剣に受け止めることにした警察の判断が一定の役割を果たしたのは間違いない。

 1990年、当時ニューヨーク市交通警察のトップだったビル・ブラットン氏は部下の警官らに、自動改札を飛び越えて無賃乗車する人をできる限り逮捕するよう指示した。

 すると、無賃乗車で逮捕された人の7人に1人は別の犯罪で指名手配されており、20人に1人がナイフか銃、その他の武器を携帯していることが分かった。1年足らずで、地下鉄での犯罪は30%減少した。

 ブラットン氏は1994年にニューヨーク市警の本部長になり、地下鉄で行ったことを、当時は非常に危険だった市内の街頭に持ち込んだ。1990年以降、ニューヨーク市の犯罪は劇的に減少し、その後も低水準にとどまった。ニューヨーカーたちは今、状況がこれから変わるかもしれないと心配している。

デブラシオ市長の警察批判に怒る警官、一部の法律執行を放棄

 ニューヨーク市警の多くの警官は最近、些細な事件については、あえて法律を執行しないことにした。警官たちがそうしているのは、昨年、警官が民間人を逮捕しようとして誤って殺してしまった後に警察を批判したビル・デブラシオ市長に対する怒りからだ(多くのニューヨーカーは市長よりはるかに声高に怒りを爆発させた)。

 2015年の第1週に、ニューヨーク市警が無賃乗車で逮捕した人はたった3人だった。これに対し、2014年の同じ週には400人以上を逮捕していた。

 市内での逮捕件数は半分以下に減った。軽犯罪や交通違反、駐車違反に対して出された召喚状は前年同期と比べて90%以上も減った。審理する事件がなくなり、刑事裁判所の判事は手持ち無沙汰にしている。ある警官はあまりに時間を持て余したようで、動いている警察車両のボンネット上でふざけているうちに怪我をした。