2014年は、4月に国立国際医療研究センター病院で造影剤の誤薬による死亡事故があり、12月に大阪府立急性期・総合医療センターで類似薬剤名の取り違えによる誤投与で死亡事故が発生した。今まで何度も繰り返されている単純誤薬による死亡事故であり、いずれの場合も病院は記者会見をして警察に届け出た。ともに日本医療機能評価機構により「患者中心の医療」をしていると認定されている名の通った病院である。

 日本医療機能評価機構は、このような類似の事故を報告させ、分析し、再発防止策を公表してきた。今回の問題点は少なくとも2つある。1つは、日本医療機能評価機能の医療事故情報収集等事業は現場の改善作業に役立っていない。分析して再発防止策は公表するが、その後の検証をしていないということである。上記のような有名病院でさえ、たった1カ所のエラーで、すぐ人の死に至ってしまうようなお寒い医療環境が実情だった。そこをまた「良い病院」と認定したのも日本医療機能評価機構である。この機構は産科医療補償制度も扱っているが、是非早急に自分達の仕事の内容を見直して頂きたいものである。

 もう1つは、外表に異状のない診療関連死は警察に届ける必要がないにもかかわらず、各病院とも今もって警察に届けているということである。国立国際医療センターの事故では、記者会見で医療者が特定されてしまったことも含め、WHOの医療安全のための報告制度で示されている「非懲罰性」「秘匿性」に真っ向から対立するものであり医療者の人権侵害である。まして国立国際医療研究センター病院は、日本医療安全調査機構の事務局長が院長を勤めた病院である。今や、警察に届けるかどうかでその病院に真の医療安全の専門家がいるかどうかのリトマス紙になると言える。

 大阪府立急性期・総合医療センターの内規では、インシデント報告者・医療事故の報告者は免責されるという規定があるにもかかわらず、「医療過誤が原因で患者が死亡または患者に重大な障害が発生した場合、速やかに所轄警察署への届け出、公表等の対応を行う」と相反する内規が放置されている。