(2015年1月13日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 パリのテロ攻撃の数日前、1冊の本が筆者のオフィスに届いた。ローラン・コーエン・タニュジ著『What’s Wrong with France? (フランスのどこがいけないのか)』という本だ。

 筆者の本棚には、これによく似たタイトルの本が並んでいる。『France on the Brink(崖っぷちのフランス)』『France in Denial(現実を否認するフランス)』『France in Freefall(フランス急降下)』『France’s Suicide(フランスの自殺)』といったラインアップだ。

 「衰退主義」においては、米国はアマチュアでしかない。フランスを先週襲ったテロリストたちは、すでに深刻な自信喪失の危機を経験している国を攻撃した。

 衰退主義者たちが指摘するフランスの悩みは多岐にわたる。人種間の緊張、過激な政治思想の台頭、高い失業率、債務の増大、国際社会での影響力の低下、支配層のエリートに対する侮蔑の広がりといった具合だ。

単なる標語ではない「自由、平等、友愛」の理念

フランス全土で反テロ集会、史上最多の370万人参加

1月11日、仏パリのレピュブリック(共和国)広場で行われた反テロ集会〔AFPBB News

 しかし、今回のテロは予想外の、それも歓迎すべき効果を1つもたらした。フランスのどこがいけないのかだけでなく、どこが良いのかを思い出すきっかけになってくれたのだ。

 11日に行進に参加した数百万人の人々は、フランス革命から取り入れられ、退屈している子供たちに教えられている「自由、平等、友愛」という国家の標語が単なる言葉にはとどまらないことを、身をもって示していた。

 このモットーが深刻な脅威にさらされていることを受けて、フランス国民は団結した。つまり、この概念は生きているのだ。

 ずいぶん中傷されてきた政治指導者たちも、ためになる危機を経験した。フランソワ・オランド大統領の振る舞いには、これまで欠けることの多かった威厳がちゃんと備わっている。また、マニュエル・バルス首相が反ユダヤ主義を非難してフランス共和国の理想を擁護する言葉には、情熱とエネルギーが感じられる。