現在、バイオマスプラスチックは、トウモロコシやサトウキビなど資源作物を材料に作られることが多い。それが、食品製造・加工業から出る業務用生ゴミ(廃棄物系バイオマス)から作ることが可能になった。その名は、FluidSolids。「液体だけれど硬い」という意味だ。

 特許を取得しているこのプラスチックは、エミッションフリーで再利用可能。開発に6年を要した。そして、いま実用化段階に入った。中国で工場の設立を進めていて、量産・販売が始まる。

廃棄物系バイオマスで、木の風合いを持つプラスチックを開発

 まるで木のような風合いを持つプラスチック。トルソー、椅子、ハンガーを目の前にして、筆者は「わぁー素敵ですね! 本当に木のようですね」と感嘆の言葉をあげた。

 ここは、スイス・チューリッヒのFluidSolids社。新しいバイオマスプラスチックFluidSolids開発者のベアト・カレ(Beat Karre)氏が、様々な商品見本を見せてくれた。同社はカレ氏が設立した。

 「そうでしょう! でも、本当にプラスチックなんですよね。業務用生ゴミを買って、我われが開発した技術を使うとこうなるのです。

 色は業務用生ゴミの色がそのまま出ています。あとは、あちらに置いた多数の時計のように、天然着色料を使って色を付けることもできます。単色だけでなく、何色かを使ってまだら模様にもできます」

 FluidSolidsは普通のプラスチックと同じように、形も色も変幻自在だ。カレ氏が見せてくれたアイテムは見本品。量産・販売は、いま準備中だ。

 「FluidSolidsを開発できて、今度は実用化に向けて、こういうものが作れますよということを披露しないといけません。ですから、こうして色々なアイテムをデザインしてみました。でも、これはあくまでも見本です。トルソーとハンガーは量産することに決めましたが、ほかにどんな商品を作っていくか、これから考えます」

 これらのアイテムは、カレ氏自身がデザインした。カレ氏は技術分野の研究者ではない。工業デザイナーで自分のスタジオも持ち、照明などの工業製品をデザインしている。大学や研究所でデザインに関する講義なども行っている。

 FluidSolidsの開発は、自分で実験を行い、大学などの協力を得て達成した。改良点はまだあり、研究はいまも続けている。

食品ゴミが材料のバイオマスプラスチックFluidSolids製のトルソー。ポリエステルよりも軽くポリウレタンより少し重い。価格も、おおよそ両者の間になるという(写真提供:特記以外FluidSolids AG)