1月7日、パリ時間の午前11時30分頃、フランスの風刺週刊紙シャルリ・エブド1(Charlie Hebdo)で襲撃事件が起こった。

 カラシニコフを持った覆面の2人の男が、「アラーは偉大なり」、「予言者モハメッドのために復讐した」と叫んで、パリ11区のシャルリ・エブド本社を襲撃、合計12人が死亡、11人が負傷(うち4人が重傷)した。

4つの事件が続いた3日間の顛末

シャルリ・エブド本社(10, rue Nicolas-Appert)の位置(出所:La Dépêche

 容疑者であるサイド・クアシ(Saïd Kouachi、34歳)とシェリフ・クアシ(Chérif Kouachi、32歳)の兄弟は、襲撃事件後に逃走、48時間後の9日の朝、パリの北東に位置するダマルタン・オン・ゴエル(Dammartin-en-Goële:セーヌエマルヌ県)の印刷工場に立てこもった。

 その際、人質1人を取ったとされたが、結局は人質ではなく、建物中に隠れており、それにクアシ兄弟は気づいていなかったという。この人物が外部に待機していた治安機関にSMSで貴重な情報を伝えていたとされる。

 この事件により、7日13時、フランスのテロ警告システム「ヴィジピラット(Vigipirate)」が、パリとその近郊において最高レベルの「テロ襲撃警戒(Alerte attentat)」に引き上げられた2

 特に、宗教関係施設、駅、空港、新聞社、公的機関、学校、デパートなどの付近では、軍や警察による監視が強化された。内務省によると、憲兵隊(Gendarme)、機動隊(CRS)など500人ほどがパリ市内で増強されたという。

アメディ・クリバリ容疑者とみられる男を写した動画からの1コマ。(2015年1月11日、イスラム過激派系ウェブサイトより取得) ©AFP [AFPBB News]

 また、8日の朝8時頃には、パリ郊外南部のモンルージュ(Montrouge)において警察官2人が銃で撃たれ負傷した。そのうちの1人は研修中の26歳の女性の警察官で、その後死亡している。

 容疑者は黒い服装で防弾チョッキを着ていたとされ、小型車から降り、2人の警察官に向けて発砲したという。9日の時点でこの男はアメディ・クリバリ3(Ahmedy Coulibaly)と確認され、クアシ兄弟との繋がりも確認された。

 その後逃走していたクリバリは、9日13時、パリ東部のポルト・ド・ヴァンセンヌ(Porte de Vincennes)にあるユダヤ系食料品店、Hyper Cacherに人質を取って立てこもった。クリバリはクアシ兄弟の解放を要求していたと言われる。

 こうして、シャルリ・エブド事件から24時間後にもう1つの発砲事件が発生し、その後2件の立てこもり事件となり、クアシ兄弟とクリバリの繋がりが確認された中、ダマルタン・オン・ゴエルとヴァンセンヌの2カ所において、人質解放・犯人拘束のために治安機関(GIGN、RAID、BRI)が配置され、犯人との交渉を始めた。

 9日17時頃には2カ所同時に突撃が行なわれ、クアシ兄弟、そしてクリバリは射殺された。

1 2006年にイスラム教の予言者ムハンマドの風刺画を掲載したことで有名。

2 その後8日には、ピカルディ地方(クアシ兄弟が逃走した方向)でも同じく最高レベルに引き上げられている。

3 麻薬密売、強盗など多くの犯罪歴があり、すでに治安関係に知られた人物である。シェリフとは刑務所で出会っている。パートナー(宗教上では2009年に結婚)であるアイヤ・ブメディエンヌ(Hayat Boumeddiene)は危険人物として現在指名手配中だが、1月2日にマドリードからトルコ行きの飛行機に搭乗し、8日にはトルコ治安当局によりトルコとシリアの国境付近で見かけられている。ブメディエンヌとシェリフの妻との間には、2014年中に500回の電話でのコンタクトがあったとされる。