(英エコノミスト誌 2015年1月10日号)

イスラム主義者が言論の自由を攻撃している。だが、その血塗られた中世的な慣習に対抗する手段として、イスラム全体を中傷するのは間違いだ。

襲撃受けた仏風刺紙、特別号発行へ 大幅増の100万部

フランスの小説家ミシェル・ウエルベック氏を特集したシャルリエブドの紙面を読む人〔AFPBB News

 風刺画が売り物のフランスの週刊紙、シャルリエブドの最新号は、フランスの小説家ミシェル・ウエルベック氏を特集している。

 ウェルベック氏は新作小説で、フランス、そして次に欧州連合(EU)がイスラム化していく近未来を描いている。

 イスラム主義者がフランスの大統領選に勝利し、自由が蝕まれるという、イスラム教を嫌悪する者たちが流しているデマと同じ筋書きをたどるこの小説は、発売前から批評家から非難されていた。

 そして、その小説の発売日に、銃を持った覆面の男たちが、パリにあるシャルリエブドのオフィスを襲撃した。男たちは「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫びながら12人を殺害し、さらに複数の人を負傷させた。この事件は、フランスで起きたものとしては過去50年で最悪のテロとなった。

欧州の最も恐ろしい悪夢が現実に

 銃を持った男たちは逃走し、警察は2人の兄弟を容疑者として指名手配している。折しも欧州全体で、ドレスデンの街頭デモからイングランドの選挙に至るまで、反移民感情――とりわけ反イスラム感情――がじわじわと浸透している中で起きたパリの残虐行為は、欧州の最も恐ろしい悪夢をおぞましい現実にしたかのような出来事だった。実際、風刺画にしたかのような、と言ってもいいだろう。

 テロ攻撃に対する不吉な警告が絶えずあったにもかかわらず、今回の大量殺人に対する最初の反応は、フランスでもほかの国でも、当然のことながら激しい怒りだった。だが、この事件は、さらに大きな反応を引き出さずには済まない。

 シャルリエブドが標的にされたのは、人の感情を損ねることをする権利、特にイスラム教徒の感情を損ねることをする権利を堅持し、掲げていたからだ。その基本的姿勢は、2つの大きなテーマを呼び起こす。

 1つは、言論の自由だ。自粛であれ何であれ、言論の自由を制限すべきだったのだろうか? その答えは、断固として「ノー」だ。